本研究の目的は, 鋼材に代表される脆性および延性破壊を混合する3次元弾塑性・き裂伝播モデルを開発し,き裂伝播およびアレスト現象を再現することである.本研究で扱う数値解析手法Peridynamics (PD)を用いて以下の研究を実施した. 1). 前年度までに,弾塑性材料に対しPD定式化を行ってきた.本年度は,PDにおける弾塑性挙動の特性を調査するため,有限要素法との比較検討を行った.提案手法は,様々な影響関数や加工硬化の考慮など従来の簡易弾塑性モデルを拡張したものである.PDは影響半径や影響関数の設定方法により計算結果に与える影響が少なくないことが知られている.そのため,様々な影響半径および影響関数を設定し,一軸引張解析を用いて有限要素法と比較した.提案手法により影響関数を距離に応じた重みを与えることにより,ばらつきが小さく良好な解が得られることを確認した. 2). 計算リソースの効率利用のため,解析効率はあらゆる数値解析手法において重要視される.例えば,有限要素法では,変位勾配が急激に変化する応力集中部に対し小さいメッシュを配置し,変位勾配がなだらかな位置に荒いメッシュを配置するなど,様々な空間解像度を用いること全体の自由度を低減させ計算コストを低減する.一方,PDでは有限要素法のように異なる空間解像度によるモデル化が困難である.PDは粒子ベースの手法ゆえに,高い精度が要求される場合極めて多くの粒子数が要求される.これまでに空間解像度の変化に対応したいくつかの定式化が提案されているが,本研究では,空間解像度を変化に応じた条件を満足するための一般的な条件を示し,Variable horizon PD定式化を示した.また,空間解像度の変化に伴いう数学的誤差を低減するためSmoothed Variable horizon PDを提案し,その妥当性を確認した.
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