研究課題
本研究課題では、光機能性分子系の理論設計法の開発・応用し、最適な機能と構造の関係に関する新たな知見を得ることを目的としている。2019年度は、下記の研究成果を得た。フレンケル励起子モデルに基づいて分子集合体の光学物性に関する逆設計法を開発し、光機能性分子系の設計と最適な光機能と構造の関係に関する新たな知見を得た。開発した設計法では、候補群中の候補分子集合体を表すハミルトニアンを導入し、全探索が困難である莫大な候補群において最適化による合理的かつ効率的な光機能性分子集合体の設計を可能にした。本設計法を複数の候補分子種と候補空間配置をもつ一次元分子集合体の設計に適用し、強い光吸収・円二色性をもつ集合系の分子組成・構造を提案した。また、適切な分子集合体の設計・形成と構成分子数の増大により、非線形的に円二色性を増大可能であることを示した。さらに、設計した系の光学物性を解析し、潜在的な光機能が十分に活かされていることを明らかにした。これらの結果から、高い光機能を得るために設計法による提案と精密な分子種・分子配向制御が重要であることを示した。研究成果は論文として既にまとめており、国際学術誌に投稿している。光機能性分子の機能の機構解明に関する実験・理論計算の研究グループとの共同研究も実施した。紫外線吸収分子の複数の励起状態が関与する無輻射失活過程とその置換基効果を明らかにした。また、スピン偏極電流を切り替える光・熱キラル分子モーターのスピン軌道相互作用を調べた。これらの結果は、国際学術誌で発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題で当初計画していた光機能性分子系の理論設計法の開発・応用は、順調に進展している。特に2019年度は、望む光学物性をもつ分子集合体の理論設計法の開発・応用に成功した。具体的には、理論設計法の定式化とプログラムの実装を行い、本設計法を色素の典型的な凝集構造に適用し、強い光吸収と円二色性をもつ分子集合体の分子組成と構造を提案した。この応用研究では、設計法の性能と適用性を詳細に検証し、設計した光学物性の解析にも成功した。本研究成果は、論文としてまとめており、国際学術誌に投稿している。続いて、上記の研究で得た知見をもとに、最先端の大規模複雑分子系モデリング手法に基づく光機能分子システムの理論設計法の開発に取り組んだ。さらに、光機能性分子系の機能の機構解明に関する共同研究を行うことができた。研究結果は、国際学術誌で発表した。以上のことから、当初の計画以上に研究が進展していると考えている。
本研究課題をさらに進展させ、より有用性の高い理論を開発し、外場・環境を含む光機能分子システムの設計に関する研究を推進する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
フロンティア(理論化学会機関誌)
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