本研究課題では、光機能性分子系の理論設計法の開発・応用し、最適な機能と構造の関係に関する新たな知見を得ることを目的としている。2020年度は、下記の研究成果を得た。 国際共同研究を行い、分子-金属ナノ構造体複合系と入射場の逆設計法を開発した。電磁場を照射することで金属ナノ構造体の表面に生じるプラズモンと分子の相互作用は、分子の光物性を大きく変える。したがって、光化学現象を自在に操作するために様々な光機能性分子-金属ナノ構造体複合系が開発されているが、開発を加速するために設計指針が必要とされている。提案した逆設計法は、時間依存配置間相互作用理論と誘電体モデルを用いた時間依存境界要素法に基づいて分子-金属ナノ構造体複合系の候補群を記述し、金属ナノ構造体近傍の分子の分子種と空間配置および入射電場の連続最適化による効率的な設計を可能にしている。有機分子の標的励起状態への選択的励起を実現する分子の化学修飾と金属ナノ構造体に対する空間配置および入射電場の設計を実施し、所望の光物性を実現するために分子-金属ナノ構造体複合系と入射場の設計と制御が重要であることを示した。結果をまとめた論文を近日中に国際論文誌に投稿予定である。 昨年度に国際論文誌に投稿した光機能性分子集合体の逆設計法を開発に関する研究の論文は、査読意見に従い改稿を行い、掲載受理された。 多孔性結晶中の制限された空間における基質の光反応変換の機構解明に関する実験グループとの共同研究を行い、結果を国際論文誌で発表した。 以上のように、光機能性分子集合体と分子-金属ナノ構造体複合系の合理的設計と分子系の新たな光機能開拓に関して、基礎化学的な知見を与える研究を実施することができた。
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