研究課題/領域番号 |
19J14140
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 綾華 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | イワタバコ科 / モノフィレア属 / 溝分裂組織 / 基部分裂組織 / 茎頂分裂組織 / 葉分裂組織 / whole-mount in situ hybridization / RNA-seq |
研究実績の概要 |
一般的な種子植物は葉・茎・腋芽の繰り返し構造であるシュートを作り、その葉は有限成長型の器官である。一方で、本研究で扱うモノフィレア属の植物(以下モノフィレア)は、2枚のうち1枚の子葉のみを無限成長させ、栄養成長期の間は他に葉や茎を作ることはない。この特異な発生様式を支える分子機構の解明を目指して研究を実施した。 そのためにまず、植物の形態形成の中心である、分裂組織に注目した。一般的な植物の場合、葉には有限の細胞分裂活性を持つ葉分裂組織、シュートの先端には無限の器官形成能を持つ茎頂分裂組織を持つ。モノフィレアにもこれらの分裂組織に対応する組織が存在することが知られているものの、モノフィレアの葉分裂組織にあたる基部分裂組織の細胞分裂活性は無限に維持され、栄養成長期の間は茎頂分裂組織にあたる溝分裂組織は新しい器官を作らない。これらの組織の性質の違いを生み出す分子機構を明らかにするため、遺伝子発現解析を行なった。 まずモノフィレアの一種であるM. glabraの微小な分裂組織を単離し、mRNA-seqを行なった。そして独自に得たレファレンス配列にマッピングし、M. glabraの各組織における各遺伝子の発現量データを得た。 また、より詳細な遺伝子空間的発現パターンを調べるため、M. glabraのために独自に確立したwhole-mount in situ hybridizationの系を用い、一般的な植物の葉分裂組織や茎頂分裂組織の形成・維持・機能に重要な遺伝子の発現パターンを調べた。その結果、一般的な植物と同様の発現パターンを示す遺伝子もある一方、そうではない遺伝子もあることが分かり、モノフィレアの分裂組織は、一般的な植物における異なる分裂組織の性質が混ざり合った曖昧な特徴を持っている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
M. glabraについて、微小組織の単離とそれらの組織におけるmRNA-seqに成功し、異なる性質を持った組織の遺伝子発現量の可視化を完了した。さらに、whole-mount in situ hybridizationを用いて茎頂・側生器官の発生に重要ないくつかの遺伝子の空間的発現パターン解析に成功し、モノフィレアにユニークな発現パターンを示す遺伝子も見つかっている。よって本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
mRNA-seqによって得られた遺伝子発現データを用いて、モノフィレアにユニークな発現パターンを示す遺伝子群を網羅的に同定する。またそれらの詳細な空間的発現パターンをwhole-mount in situ hybridizationを用いて解析する。さらにそれらの遺伝子や、現在までに特有の発現パターンを示すことが明らかになった遺伝子について、モノフィレアにおける機能解析を行なうため、モノフィレアの形質転換系を確立する。そして着目する遺伝子についてノックダウンを行ない、表現形を観察し、モノフィレアの特異な形態形成を支える遺伝子群を決定する。
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