本研究は、「不妊治療と仕事の両立」という、女性の就労継続をめぐる新たな課題に焦点を当て、不妊治療中の女性の就労継続を規定する要因について、個人要因、職場環境、企業内の両立支援制度、公的な制度に着目しながら検討するものである。 2021年度は、前年度に実施した質問紙調査(不妊治療を扱う医療機関に通院する者が対象)のデータについて、①自由回答欄のテキストを用いた計量テキスト分析、②退職の規定要因をめぐる多変量解析を行った。 質問紙調査の自由回答欄を用いた計量テキスト分析では、不妊治療を受けている女性の「職種」という変数に着目し、不妊治療と仕事の両立をめぐる葛藤の職種による差異を明らかにした。分析にはKHコーダーを用いた。 また、退職の規定要因をめぐる多変量解析では、不妊治療中の女性の退職/就労継続に影響を及ぼす支援制度について、制度の具体的な内容に着目しながら分析を行った。現在、企業において不妊治療を受ける従業員を支援する制度の導入が進められつつあるが、就労継続につながる具体的な制度内容はこれまで実証的に明らかにされていない。したがって、本研究の結果は、政策的な貢献も期待することができる。 質問紙調査の自由回答欄を用いた計量テキスト分析の結果は、2022年4月刊行の『21世紀の産業・労働社会学』(ナカニシヤ出版)に分担執筆した論文(「第8章 不妊治療と仕事の両立の葛藤をめぐる計量テキスト分析 職種の違いに着目して」)として発表した。現在、就労しながら不妊治療を受ける女性の退職の規定要因に関する多変量解析に関する論文を投稿準備中であり、今後この成果についても発表を行う予定である。
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