研究課題/領域番号 |
19J14339
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柿野 諒 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | Radiomics / 深層学習 / 予後予測 / 機械学習 / 肺SBRT / 医学物理学 |
研究実績の概要 |
本研究は医の倫理委員会の承認を得ている.今年度は,本研究課題の前段階として,「i)Radiomics特徴量抽出における造影剤有無の影響」及び,「ii)Radiomics特徴量に基づく予後予測」について研究を行った. i)については,定位放射線治療(以下,SBRT)を施行した非小細胞肺癌患者のうち,造影CTまたは単純CTを受けた患者を対象とした.CT画像の腫瘍領域よりRadiomics特徴量を抽出した.各特徴量の輪郭入力の違いに対する頑強性を調べた後,造影剤有無の影響を統計解析により評価した.結果として,対象となった80個の特徴量のうち,30個で造影剤有無による有意差を生じた.肉眼では造影を施行したか確認できないような腫瘍も,多くのRadiomics特徴量に影響していることが明らかになった. 次に,ii)については,SBRTを施行した非小細胞肺癌患者を11施設から収集した.評価する臨床転帰を局所再発・遠隔転移とした.Waveletフィルタ等により画像処理したCT画像より,Radiomics特徴量を抽出した後,特徴量の頑強性・冗長性に基づき特徴量選択を行った.その後,臨床転帰と関係性の高い特徴量を選択し,機械学習アルゴリズムの一つであるRandom survival forest (RSF)に基づき,モデルを作成した.モデルは,臨床因子(年齢,性別,BMI等)のみを入力した「臨床モデル」,Radiomics特徴量のみを入力した「画像モデル」,両者を入力した「混合モデル」を構築した.結果として,予測精度を示すC統計量は,臨床モデル,画像モデル,混合モデルでそれぞれ0.59,0.67,0.68となり,リスク分類による累積発生率の差は混合モデルが最も大きいことが明らかになった.RSF内の特徴量重要度はどの臨床因子よりも2つRadiomics特徴量が高いことが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書のうち①Radiomicsに基づく予後予測は,CT造影剤有無の影響のみならず,多施設共同研究についても完遂した.CT造影剤有無の影響についての研究は,海外学術論文誌に採択された.また,予後予測の多施設共同研究は国内・海外学会で発表を行い,現在,海外学術論文誌に投稿・査読中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,「深層学習に基づく予後予測」について研究を進める予定である.深層学習では一般的に,二次元畳込ニューラルネットワーク(CNN)が用いられることが多いが,本研究では,三次元CNNに基づき,入力データとして三次元CTを用いて予後予測を行っていく.さらに,患者のメタデータや,全身情報を反映した再構成画像を用いて予測精度の向上を図っていく.モデルの頑強性を高めるため,適宜,交差検証やハイパーパラメータチューニングを行っていく.年度中の論文投稿・採択を目標とする.
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