高周期13/15族元素であるアルミニウム(Al)とリン(P)との間に結合を有するAl-P単結合化学種「ホスファニルアルマン」の反応性を詳細に検討した。以下その概要を述べる。1. ホスファニルアルマンとアルケンとの可逆的反応 典型元素化学におけるアルケンとの可逆的な反応が低配位化学種によってのみ達成されていたことを鑑み、これらの化学種に類似した軌道相互作用を示すホスファニルアルマンとアルケンとの反応を検討した。比較的小さなアルケンとホスファニルアルマンが室温で反応し、加熱や他分子との反応で付加したアルケンが脱離することを見出し、はじめて典型元素飽和化学種によるアルケンとの可逆的な反応を達成した。さらにアルケン付加体を反応性化学種Al/P-(FLP)としての反応性を重点的に調べ、これまで知られているB/P-FLPの反応性とは大きく異なっていることを明らかにした。これらの成果は、本研究における鍵分子であるホスファニルアルマンを用いて、将来的な触媒反応への淡海が可能になることを示唆している。 2. Al-P結合への原子挿入反応 また、Al-P結合の性質をさらに解明すべく、Al-P結合への原子あるいは分子の挿入反応を検討した。硫黄との反応では、Al-P結合に2つのS原子が挿入された四員環状化合物[Al-S-P-S]を与えることを見出した。この分子を構造解析・理論計算から評価することで、Al部分がPS2部分によって挟まれた構造の寄与が大きく、ホウ素(B)を含む類縁環状化合物[B-S-P-S]の示す構造とは異なっていること示した。このように、Bの系との比較によりAlの導入の意義を実証するとともに、その高い反応性を活かした新規小分子活性化反応を展開できた。
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