研究課題
地球磁気圏におけるリングカレント帯の高エネルギーイオンは、波動粒子相互作用によって加速・減速されると考えられている。このような高エネルギーイオンの加減速過程は内部磁気圏のダイナミクスを理解する上で非常に重要である。本年度の研究では、地球磁気圏で起きている地磁気脈動のうちPc5として分類される波動と高エネルギー酸素イオンのドリフトバウンス共鳴現象を調べ、共鳴によるPc5脈動と高エネルギー酸素イオン間のエネルギー輸送に関する性質を明らかにすることが目的である。まず、地球磁気圏を飛翔するMMS衛星が観測した1年7ヶ月にわたる磁場・電場・粒子データを調べたところ、酸素イオンのドリフトバウンス共鳴現象を12例見出した。1つのイベントに関して詳細な解析を実施した結果、ドリフトバウンス共鳴が起きると同時に酸素イオンのエネルギー密度が増大していることが明らかになった。酸素イオンのエネルギー増加量を定量的に推定したところ、その増加量は磁気嵐の発達にはほとんど寄与しない程度であることがわかった。12例の解析からは、水素イオンのエネルギー密度に対する酸素イオンのエネルギー密度が、その場で生じている波動の電場と良い相関があることが明らかになった。これらは、Pc5脈動によって酸素イオンが加速されていることを示す証拠である。なお、本年度は海外の研究機関へも短期研究留学し、研鑽をつんだ。そして採用1年目にしてAGU Fall Meetingなどの国際学会において成果を発表し、さらに国際学術誌であるJournal of Geophysical Research誌にも本研究結果が掲載された。
2: おおむね順調に進展している
酸素イオンとPc5脈動のドリフトバウンス共鳴現象について、MMS衛星の取得したデータを解析し、成果をまとめたところ、Journal of Geophysical Research誌に掲載された。したがって、本研究は順調に進展していると言える。
現在進行している人工衛星データと地上観測データを合わせた解析を引き続き実施する。本年度の研究は40 keV以下の酸素イオンに着目したが、今後はより高いエネルギー帯のイオンとの共鳴現象についても解析を進める。また、宇宙空間におけるイオンの分布関数が共鳴によるイオンの加減速過程に影響を及ぼすと考えられているため、イオンの分布関数との関連性についても議論していく予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Journal of Geophysical Research: Space Physics
巻: 125 ページ: -
10.1029/2019JA027686
巻: 124 ページ: 8707-8726
10.1029/2019JA027312
巻: 124 ページ: 9904-9923
10.1029/2019JA027158