現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私はこれまでにALS病因タンパク質FUSが伝播により病変を拡大する可能性を考え、FUSの神経細胞間伝播の可視化モデルを作出、FUS伝播測定モデルの構築を行いました。それらの実験モデルを活用して薬理学的、遺伝学的にFUSの放出、取り込み機序の解析を行いました。さらに、近年FTLD患者脳の大脳新皮質神経細胞の細胞質にunmethylated FUSが蓄積することに着目し、FUSのアルギニン低メチル化が伝播に与える影響の解析に精力的に取り組みました。FUSの低メチル化 (hypomethylation) と細胞間伝播の関係を明らかにするため、methyltransferase inhibitorであるadenosine-2’,3’-dialdehyde(AdOx)をFUS伝播センサー細胞に添加し、1日間培養後、ウェスタンブロット法で細胞内のtotal FUS, ADMA (dimethylated) FUS, MMA (monomethylated) FUS, UMA (unmethylated) FUSを検出しました。その結果、AdOxによりADMAは減少し、MMA、UMAは増加することが分かりました。一方、細胞内の発光を測定するとAdOx添加により発光が顕著に増加しました。このことはFUSのhypomethylationが細胞間伝播を促進することを示唆していると考えられました。これらの結果に基づき、FUSの細胞間伝播はアルギニンのhypomethylationを介しているのではないかと考えており、さらに生化学的解析を進めています。その結果、昨年秋にはアメリカ、シカゴにて行われたSociety for Neuroscience 2019においてポスター発表を行い、自らの研究について他国の研究者と議論を交わしました。その経験は、私の将来に大変有意義であったと考えられます。
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