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2019 年度 実績報告書

ブリージングカゴメ格子反強磁性体で実現する新しいフラストレート磁性の研究

研究課題

研究課題/領域番号 19J14391
研究機関北海道大学

研究代表者

石井 裕人  北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2021-03-31
キーワードブリージングカゴメ反強磁性体 / 幾何学的フラストレーション / 磁化プラトー / 超強磁場科学 / スピン液体
研究実績の概要

今年度の研究成果は主に3つに分けられる。
1.より高磁場中における1/3磁化プラトーの観測:研究の目的の1つであるより高磁場中におけるさらなる磁化プラトーの探索に関して東京大学物性研究所超強磁場科学研究施設松田(康)研究室において共同利用で行った一巻きコイル法による最高磁場122 Tまでの磁化測定により1/3磁化プラトーだと思われる明確な異常の観測に成功している。カゴメ反強磁性体では理論的に1/3磁化プラトーの出現が予想されているが実験的に明確な観測はまだなされていない。そのような背景の元でブリージングカゴメ反強磁性体であるLi2Cr3SbO8(LCSO)で明確な1/3磁化プラトーが測定が観測されたことはフラストレート磁性において重要な結果である。
2.1/9磁化プラトーの微視的状態の提案:1/9磁化プラトーの微視的状態に迫るために行った理論的な共同研究から、1/9磁化プラトーが一種のスピン液体状態であることが示唆される結果が得られた。量子性の弱いS=3/2の系における磁場中で実現するスピン液体状態は本系で新たに見出すことに成功した新規磁性である。
3.さらなる関連物質Li2M3SbO8(M=Mn,Fe)の合成:本研究の目的の1つであるブリージングカゴメ反強磁性体で実現する磁性に関する多角的な研究の展開のためには関連物質の合成とその物性調査が不可欠である。今年度関連物質であるLi2M3SbO8(M=Mn,Fe)の合成に成功した点は今後のブリージングカゴメ反強磁性体の研究を進める上で大きな進展である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までの進捗状況としてはおおむね順調に進展していると言える。その理由を以下に大きく4つに分けて記す。
1.一巻きコイル法で行った磁化測定において1/3磁化プラトーの観測に成功した。本研究の目的であるより高磁場中における1/3磁化プラトーの探索、そしてその観測に実際に成功したことは直接的に研究目的を達成できた成果である。2年度目にそのより定量的な調査を行なっていくことで研究目的を超えてより詳細な性質を明らかにしていく予定である。
2.共同研究を行い1/9磁化プラトーの微視的状態の提案に成功した。これは本研究の目的であるLi2Cr3SbO8(LCSO)の磁性に与えるブリージング異方性の役割を明らかにするということに関して1/9磁化プラトーでブリージング異方性が重要であることが示唆される結果が得られたことは本研究の目的の1つの達成に大きく近づいたと言える。
3.関連物質Li2M3SbO8(M=Mn,Fe)の開発にも成功した。これは研究実施計画では2年度目に記載したが、今年度行った実験でその開発に成功した。そのためこの点に関しては計画より早く進んでいると言える。
4.LCSOの物性測定に必要な大きさの単結晶育成に成功しなかった。これまでの実験結果から予想した方法で単結晶の育成に成功せず異なる方法での合成にシフトした。そのため微結晶の確認までしか到達できなかったためこの点に関しては計画より進んでいないということになる。しかし予想していた方法で成功しなかったところから良い出発点を見つけることができた点は2年度目にスムーズにつなげられる重要な進展である。
以上4つの成果を総合した自己評価の結果、本研究はおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策としては大きく分けて3つに分けられる。
1.Li2Cr3SbO8(LCSO)において観測された1/3磁化プラトーのより詳細な調査:今年度の研究により1/3磁化プラトーがブリージングカゴメ反強磁性体であるLCSOにおいて観測されたが、上部臨界磁場や微視的描像が明らかとなっていない。そのため2年度目はそれらに迫るべくLCSOの超強磁場中物性測定をより詳細に行っていく。
2.LCSOの単結晶化とその詳細な物性調査:現在粉末試料で様々な磁場中物性を測定しているが単結晶の物性測定を行うことができればより詳細な物性を明らかにでき、異方性などさらに多くの情報を得られる。また1年度目に提案した1/9磁化プラトー状態の実験的な調査もできる。そのため2年度目は1年度目に微結晶を確認した育成方法を出発点として、より大きな単結晶育成に適した手法を探索していく。酸化物の単結晶育成は難しいことが多く、LiやSbといった化学的に活性な元素が含まれている本物質ではその単結晶育成が難しいことが予想される。そのため現状1年度目で至ったLiClフラックス法と高圧合成で物性測定に十分なサイズの単結晶ができない可能性がある。そのような状況を避けるために2年度目はそれらの手法を中心としながらも幅広い化学的手法を用いて単結晶育成を行っていく予定である。
3.関連物質Li2M3SbO8(M=Mn,Fe)の純良試料の合成とそれらの詳細な物性測定:2年度目でその合成を行う予定であったが1年度目でその合成に成功した。少量含まれている磁性不純物を取り除くための条件精密化の段階でありそれが成功し次第詳細な構造決定と磁化・比熱測定を通してその基礎物性を明らかにしていく予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] ブリージングカゴメ格子物質Li2M3SbO8(M=Mn,Fe)の合成と磁性2020

    • 著者名/発表者名
      石井裕人、吉田紘行、小田研、山浦一成
    • 学会等名
      日本物理学会 第75回年次大会
  • [学会発表] Field Induced Successive Phase Transitions in Classical J1-J2 Buckled Honeycomb Lattice Antiferromagnet Cs3Fe2Cl92019

    • 著者名/発表者名
      Y.Ishii,Y.Narumi,Y.Matsushita,T.Matsumoto,M.Oda,T.Kida,M.Hagiwara,and H.Yoshida
    • 学会等名
      International Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2019
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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