研究課題/領域番号 |
19J14450
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩渕 龍太郎 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ヒト化マウス / 樹状細胞 / CD14 |
研究実績の概要 |
樹状細胞は自然免疫と適応免疫を仲介する重要な免疫細胞であり、近年では免疫療法としての樹状細胞ワクチンの研究も進められている。これまでにヒト末梢血から古典的樹状細胞1型(cDC1)や2型(cDC2)などの亜集団が同定されているが、臨床応用を目指す上では免疫誘導組織における亜集団の性状・機能の解明が必要である。本研究では、ヒト免疫系が構築されたヒト化マウスを用いて、免疫誘導組織で分化した多様なヒト樹状細胞亜集団の同定とその性状・機能を明らかにすることを目指す。 本年度は、LPS受容体CD14の発現に着目し樹状細胞亜集団の同定を試みた結果、ヒト化マウスリンパ組織にはヒトと同様の示すCD14陰性のcDC1およびcDC2だけでなく、CD14陽性単球とは異なるレベルでCD14を発現する樹状細胞様亜集団を発見した。そこで、このCD14陽性細胞が樹状細胞・単球どちらの性状を示すか評価するため、樹状細胞・単球マーカーの発現を解析した結果、cDC2に類似した樹状細胞マーカーを発現することが明らかとなった。 そこで、このCD14陽性細胞が樹状細胞としての機能を有するか確認するため、T細胞への抗原提示能を評価した。CD14陽性細胞、cDC2、単球について、抗原の存在下で自家のCD4陽性T細胞と共培養した結果、CD14陽性細胞はCD4陽性T細胞を刺激し、cDC2と同程度のIL-2の産生を誘導した。またRNA-Seq解析により、CD14陽性細胞はcDC2に類似した遺伝子発現を呈していること、さらにcDC2と比べ顕著な炎症関連の遺伝子発現上昇が認められた。 以上の結果から、リンパ組織におけるCD14陽性細胞の中に、炎症に関連した樹状細胞亜集団が存在することが示唆された。本研究成果は、第48回日本免疫学会学術集会にて学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は免疫誘導組織で分化した多様なヒト樹状細胞亜集団の同定とその性状・機能の解明に向けて、CD14の発現に基づく「樹状細胞亜集団の分画」、「樹状細胞亜集団の表現型の解析」を行うことで、ヒト化マウスのリンパ組織において古典的樹状樹状細胞に加えて、CD14陽性樹状細胞様亜集団を発見した。さらに「in vitroにおける樹状細胞亜集団の機能評価」により、このCD14陽性細胞が単球でなく樹状細胞に類似した細胞集団であること、また「RNA-Seqによる網羅的遺伝子発現解析」によって、古典的樹状細胞亜集団とは異なる性状を有する樹状細胞亜集団であることが示唆された。以上の結果は、免疫誘導組織におけるヒト樹状細胞亜集団において、これまでになかった樹状細胞亜集団の提唱に繋がる結果である。また遺伝子発現解析によりCD14陽性細胞の詳細な性状・機能を、次年度実験的に証明する目途がついているため、上記の評価にした。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に従い、in vivoにおけるCD14陽性細胞の機能について評価する。具体的には、遺伝子発現解析の結果から炎症関連の機能を有することが示唆されているので、ヒト化マウスへの外来抗原の投与や感染実験により炎症環境を誘導した際のCD14陽性細胞の応答性について他の樹状細胞亜集団と比較する。またCD14陽性細胞の細胞表面マーカーだけでなく転写因子などにも着目し、より詳細な特徴づけを行う。そのために、現在得られているCD14陽性細胞のRNA-Seqデータと公共の他の樹状細胞亜集団のRNA-Seqデータ活用し、CD14陽性細胞特異的なマーカーを探索し、実験的にそれを証明する。
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