樹状細胞は自然免疫と適応免疫を仲介する重要な免疫細胞であり、近年では免疫療法としての樹状細胞ワクチンの研究も進められている。これまでにヒト末梢血から古典的樹状細胞1型(cDC1)や2型(cDC2)などの亜集団が同定されているが、臨床応用を目指す上では免疫誘導組織における亜集団の性状・機能の解明が必要である。本研究では、ヒト免疫系が構築されたヒト化マウスを用いて、免疫誘導組織で分化した多様なヒト樹状細胞亜集団の同定とその性状・機能を明らかにすることを目指す。 昨年度はヒト化マウスのリンパ組織における樹状細胞を、細胞表面マーカーの発現に基づき分類した。その結果、cDC1とcDC2だけでなく、定説では樹状細胞では発現しないとされているリポポリサッカライド(LPS)受容体CD14陽性の樹状細胞亜集団を発見した。そこで今年度は、このCD14陽性樹状細胞の性状・機能の解明を試みた。 結果、このCD14陽性樹状細胞は表現型がcDC2に類似している一方で、CD4陽性T細胞を細胞性免疫の誘導に関与する1型ヘルパーT細胞へと優先的に分化させる、cDC2と異なる機能を示した。またRNAシークエンスにより、CD14陽性樹状細胞とcDC2の遺伝子発現を比較した結果、CD14陽性樹状細胞で顕著な炎症関連遺伝子の発現上昇が認められた。そこで、ヒト化マウスにLPSを投与し生体内に急性炎症を模した環境を構築したところ、CD14陽性樹状細胞は炎症性サイトカインを顕著に産生していることを明らかにした。 以上の結果から、リンパ組織におけるヒト樹状細胞の中には古典的な樹状細胞の他に、炎症性のCD14陽性樹状細胞が存在することがヒト化マウスモデルにより明らかとなった。本研究成果は、国際学術誌Frontiers in Immunology誌において発表した。
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