研究課題/領域番号 |
19J14452
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中田 直樹 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 可視光用超伝導転移端センサ / マイクロ波SQUIDマルチプレクサ / リアルタイム信号処理 / FPGA / システム構築 |
研究実績の概要 |
マイクロ波SQUIDマルチプレクサ(MW-Mux)を用いた超伝導転移端センサ(TES)の信号読出し試験を行い、その結果を電子情報通信学会超電導エレクトロニクス研究会及び18th International Workshop on Low Temperature Detectorsにて発表を行った。またJ. Low. Temp. Phys.に論文の投稿を行った。この研究成果ではγ線やX線を測定対象とするTESよりも100倍以上速く応答する可視光用TESに対して、MW-Muxが適用可能であることを世界で初めて実証した。この実証にあたっては研究計画ではシステムの高速化を必須課題として挙げていた。それに対し可視光用TESのみのユニークな方法を用いることで、サンプリング周波数の制限を撤廃し、解決を図った。 またField-Programmable Gate Array (FPGA)を用いたリアルタイム信号処理システムの開発を行い、その内容について第67回応用物理学会春季学術講演会にて発表を行った。一般的にTESの測定体系では、極低温系に置かれたSQUIDによって増幅されたTESの信号をFPGAやオシロスコープ等の室温系エレクトロニクスによってサンプリングする。その後、サンプリングデータについてオフラインで最適フィルタ処理を行い、波高値やエネルギーを取得する。この時、サンプリング機器からパソコンに送られるデータの転送量はサンプリング速度×電圧(電流)の分解能となる。さらにTESアレイから信号を読み出す場合にはTESのチャンネル数だけ倍増する。膨大なデータ量はイメージングシステムを構築する上で大きな制限となる。そこでサンプリングしたデータから光子のエネルギーを決定しヒストグラムを作成するリアルタイム信号処理システムを、FPGAを用いて構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の研究計画ではMW-Muxの実験的検証後、その結果に応じて高速化・低雑音化・多チャンネル化について取り組む予定であった。それに対して、現状では高速化については解決し、また低雑音化についても電流雑音が低減を図ったMW-Muxの設計を行った。多チャンネル化については少し遅れているが、想定の範囲内の遅れであり、他の要素が順調に進展しているため遅れを取り戻すことは可能である。 バイオイメージング用のシステムの開発についてもFPGAを用いたリアルタイム信号処理システムの開発を行い順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
上記の現在までの進捗状況で述べた通り、多チャンネル化が若干遅れている。そのためまずはアレイ化したTES素子とMW-Muxを用いた読出し評価を行う。その後、1年目に開発した他の要素を組み合わせることでシステムの完成を目指す。
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