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2019 年度 実績報告書

環境選択的重合反応による多機能性超分子ダブルネットワークヒドロゲルの高強度化

研究課題

研究課題/領域番号 19J14474
研究機関京都大学

研究代表者

田中 航  京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2021-03-31
キーワードヒドロゲル / 超分子 / self-sorting
研究実績の概要

過去に申請者はself-sorting(自己認識・他者排除)により、2種類の刺激応答性超分子ファイバーを干渉させずに複合化する事で、ユニークな刺激応答特性を示す超分子ダブルネットワーク(SDN)ヒドロゲルを開発した。しかし、これらは非共有結合から成り立つため、バイオ分野などで応用するのに十分な力学的強度を有していないという課題があった。そこで、SDNゲルの2つのネットワークを直行的に重合し、ユニークな刺激応答特性を維持したままま強度を高めたソフトマテリアルを創出する事を目的として研究を開始した。まず、ヒドロゲル化において効果的な配列である事が広く知られているジフェニルアラニンのN末端側に重合可能部位としてアクリル酸エステルを配置したゲル化剤を4種類合成し、それらが緩衝液中での加熱分散・冷却によって超分子ファイバー・ヒドロゲルを形成する事を見出した。しかし、得られたヒドロゲルの光開始剤によるラジカル重合を試みたが、反応が十分に進行するゲル化剤・条件が見つからなかった。また、力学的強度を高める目的では、超分子ヒドロゲルを高分子ヒドロゲルと複合化する方が簡単で効果的である事がわかってきた。そこで、前年度の途中にこの研究テーマを保留とした。現在、SDNゲルの種類や機能を増やす目的で動的共有結合を用いた超分子ヒドロゲル開発を行なっている。具体的には、ジフェニルアラニンアラニンのN末端にアルデヒドを導入したゲル化剤を複数種合成した。これらのゲル化剤のアルデヒド部位とベンズヒドラジドによる動的共有結合形成を利用して、光応答性官能基であるアシルヒドラゾンを導入し、ゲルへの光応答性の付与に成功している。また、このペプチド型のゲル化剤が、報告済みの脂質型ゲル化剤とself-sortingすることを発見した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ペプチド型と脂質型のゲル化剤からなる超分子ダブルネットワーク(SDN)ヒドロゲルの2つのネットワークを直行的に重合し、ユニークな刺激応答特性を維持したままま強度を高めたソフトマテリアルを創出する事を目的として研究を開始した。重合可能部位としてアクリル酸エステルを導入したペプチド型ゲル化剤を4種類合成し、それらが緩衝液中での加熱分散・冷却によって超分子ファイバー・ヒドロゲルを形成する事を見出した。その後、光ラジカル開始剤を用いたin situ重合を試みたが、ゲル化剤の重合度は最大で5と十分に反応が進行せず、超分子ゲルの強度を高める事はできなかった。また、力学的強度を高める目的では、超分子ヒドロゲルを高分子ヒドロゲルと複合化する方が簡単で効果的である事がわかってきた。そこで、前年度の途中にこの研究テーマを一時保留とした。以下に、その後掲げた研究課題とその進捗状況を記す。
SDNヒドロゲルは2種類の超分子ファイバーの特性を足し合わせた性質を有するため、複合機能ソフトマテリアルとして有望である。しかし、現状、水中でのself-sorting自体が困難であり、機能性SDNヒドロゲルの報告例は少ない。そこで本研究では、SDNゲルに様々な機能を付与する目的で動的共有結合を利用することを考えた。まず、ペプチド型ゲル化剤として、ジフェニルアラニン(FF)のN末端に4-カルボキシベンズアルデヒドを縮合したAld-FF、およびその誘導体を7種類合成し、それらが水中でヒドロゲルとなることを見出した。これらのゲルのアルデヒド部位とベンズヒドラジドによるin situ動的共有結合形成を利用して、光応答性官能基であるアシルヒドラゾンを導入し、ゲルへの光応答ゾル化能の付与に成功した。また、このペプチド型のゲル化剤が、報告済みの脂質型ゲル化剤とself-sortingすることを発見した。

今後の研究の推進方策

これまでに得られた光応答性ヒドロゲルは、330nmの光照射によってアシルヒドラゾンがトランス-シス異性化してゾル化する。その後の室温静置によって再度シス-トランス異性化する事が確認できているが、それに伴うゾル-ゲル転移には成功していない。今年度の初めに、ゲル化剤の種類や濃度、pH、塩強度を変化させて、ゲル-ゾル-ゲル転移可能な条件を探索する。可逆性を有するものを得られたら、脂質型ゲル化剤と複合化し、これまで殆ど達成された例のないself-sorting→single network (脂質ファイバー)→self-sorting制御を行う。
その他の研究計画として、光応答性以外の機能付与を行う。具体的には、Ald-FF誘導体ヒドロゲルに動的共有結合を利用して、イミダゾールを導入する事で、エステル加水分解性能を示すヒドロゲルの開発を行う事を考えている。先行研究で、イミダゾールはモノマーとして浮遊している場合より、ファイバー上に並べた場合に協同的効果によって触媒性能が大きく上昇する事が知られているが、本研究でもそれを利用する。
最後に、光応答と触媒活性能を両方有したSDNゲルを作成する。脂質ヒドロゲルとAld-FF誘導体ヒドロゲルの混合物に対して、光応答導入用のヒドラジドとイミダゾールを有したヒドラジドを同時に添加する。得られるSDNゲルは、光応答で触媒能をon-off制御可能である事が期待できる。その他にも、動的共有結合を利用した様々な機能導入を試みる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 超分子研究会アニュアルレビューNo.402020

    • 著者名/発表者名
      田中 航・浜地 格
    • 総ページ数
      24
    • 出版者
      高分子学会

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公開日: 2021-01-27  

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