光パターニングは超分子ヒドロゲルの機能を空間制御する上で優れている。Self-sorting double network (SDN)ヒドロゲルでも光パターニングが行われており、空間選択的にシングルネットワークゲルとSDNゲルが作りわけられてきた。可逆的なSDNヒドロゲルのパターニングは、特定位置でヒドロゲルの機能を可逆的あるいは一過的に制御するために有用であると考えられるが、報告例はない。そこで、本年度の研究目的を、「光応答性SDNヒドロゲルの可逆パターニング」に設定し研究を行なった。 前年度、ジフェニルアラニン誘導体のN末端にベンズアルデヒドを有したペプチド型ゲル化剤をいくらか合成した。本年度は、初めに、これらのゲル化剤からなるヒドロゲルにベンズヒドラジドを後から添加して、in situで光応答性のベンズアシルヒドラゾンの導入を行なった。ゲル化剤の種類、pH、光照射時間を最適化する事によって、光照射でゾル化が進行し、その後暗所で静置する事で再度ゲルへと回復する可逆的な光応答性ペプチド型ヒドロゲルを得ることに成功した。これをリン脂質型ゲル化剤と複合化することでSDNヒドロゲルを作成した。このSDNヒドロゲルにフォトマスク下でUV光を照射し、低倍率共焦点顕微鏡観察を行ったところ、脂質ファイバーに影響を与える事なく光照射部位のペプチドファイバーだけが選択的に破壊されている様子が観察できた。また、このゲルを暗所静置する事で、光照射部でペプチドファイバーの再形成が達成された。このように、研究目的を達成した。驚くべき事に、さらに静置時間を延ばすと、光照射部でペプチドファイバーの濃縮現象が見られた。様々な追加実験によってこのメカニズムについて、仮設の構築に成功した。このように、SDNヒドロゲル中において、単独系では不可能なペプチドファイバーの非平衡パターン制御を達成した。
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