研究実績の概要 |
本研究では、「避難先定住者」の復興プロセスを分析することで、移行のリスクを軽減した復興計画論を構築することを目的として、①岩手県盛岡市への避難者(約1,000世帯)を対象に世帯情報の分析から避難者の居住動向と避難先定住に関する課題を明らかにし、②支援団体・行政へのインタビューから避難先定住者の居住の安定に関する制度・運用上の課題について明らかにした。主要な結果を以下に示す。 ①避難先定住者は大きく2類でき、資力のある層は早期に持家を取得し、相対的に家計にゆとりのない層は期限付近まで借上型仮設住宅に入居し、その後賃貸住宅に移っている。また、「避難先定住者」は、「被災地に戻る」、「別の市町村に移る」場合と比較して、障がい者を含む・生活困窮といった住宅確保要配慮者の該当割合が2割高い。この要因として、支援者への聞き取り調査によると、避難先で各種支援機関とつながったことが挙げられた。 ②仮設住宅の入居期間や本設住宅に対する支援金の支給といった支援制度の利用条件の多くは被災自治体に紐づいていること、避難と同時に世帯分離した世帯が全体の1割半を占めているなど状況が複雑化し、支援制度の利用の可否がわかりづらい状況が生まれている。岩手県では一部の支援制度の利用条件を緩和する措置も取っているが、必ずしも全ての課題に対応できている訳ではない。また、盛岡市では、生活支援員による住まいの移行支援を実施し、被災自治体との連携、盛岡市の福祉団体との連携を試みているものの、状況認識の違いや個人情報保護を理由に、円滑に進まないこともある。 以上より、「避難先定住者」は、住宅確保要配慮者の該当割合が相対的に高く、既存の支援制度の不整合が生じているケースも存在していることから、支援制度の利用要件緩和や生活支援員による細やかな住まいの移行支援が将来的な災害においても求められることが明らかになった。
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