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2020 年度 実績報告書

現代音楽におけるコラージュ技法研究:1970年代の作曲家の実践と音楽観を軸として

研究課題

研究課題/領域番号 19J14482
研究機関東京大学

研究代表者

曹 有敬  東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2021-03-31
キーワード戦後ダルムシュタット / 音楽のコラージュの政治性 / B. A. ツィンマーマン / H. W. ヘンツェ / G. リゲティ
研究実績の概要

本年度は、戦後西ドイツの音楽文化形成の中心的な役割を担っていたダルムシュタット講習会を巡る音楽的、思想的、政治的関係を検討し、戦後第一世代の作曲家の言説や批評を分析する実証的な考察を行った。まず戦後ダルムシュタットという問題的場所に着目し、当時の思想家(T.W.アドルノ、C.ダールハウスら)や作曲家達が関わっていた「音楽と政治」論争の背景やその内容を探った。彼らの中には「どのようにして音楽的自律性を保ちながら、社会的責任を果たすのか」という新たな美学的課題が浮上した。この課題は、特に音楽創作にあって様々なアポリアを生み出した。すなわち、戦時中の扇動的音楽を批判する立場にとって、音楽は社会という音楽外的要素から距離を置くべきだったはずだが、混乱した戦後の世界的情勢の問題から目を逸らすことはできなかった。こういったアポリアは、音楽の自律性と他律性への問い直しにつながった。この過程において、「政治的音楽」、「参加(Engagement/Commitment)、「伝統」といった概念の見直しが促進された。その中で、戦後第一世代の作曲家ら(B.A.ツィンマーマン、H.W.ヘンツェ、G.リゲティ)は、「芸術と生の一致」という独自の音楽観を共有し、音楽のコラージュを通してその理念を具現化したことが明らかになった。
1960年代から70年代における音楽のコラージュは、戦前におけるナチスへの抵抗と戦後の権威に対する抵抗が融合された形で実践されたものであり、この意味において、ナチス批判に限定されず、人道主義やコスモポリタン的理念が組み込まれている。この過程において用いられた音楽のコラージュには、作曲技法的側面以上に、批判性や抵抗性を示す意味論的要素が含まれていることを明らかにした。従来の「長い60年代」の抵抗文化研究では見逃されてきた西洋芸術現代音楽を精神史・文化史の中で位置づけることができた。

現在までの達成度 (段落)

令和2年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和2年度が最終年度であるため、記入しない。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 一九六〇年代~七〇年代におけるヘンツェの言説から読み取る音楽の抵抗性ーー政治的「革新性」と音楽的「保守性」の問題をめぐってーー2021

    • 著者名/発表者名
      曹 有敬
    • 雑誌名

      美学芸術学研究

      巻: 39 ページ: 21-59

    • DOI

      10.15083/0002000982

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 現代音楽における虚構と実在の力学ーーB. A. ツィンマーマンの《ある若き詩人のためのレクイエム》におけるメディア性2020

    • 著者名/発表者名
      曹 有敬
    • 学会等名
      表象文化論学会オンライン研究フォーラム2020
  • [学会発表] Hans Werner Henze's Semantic Collage in the 1960s and 1970s: Between Musical Autonomy and Politicization of Music2020

    • 著者名/発表者名
      Cho, You-Kyung
    • 学会等名
      International Conference "Music and Resistance"
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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