研究実績の概要 |
水安定同位体の分別過程が組み込まれた気候モデル MIROC5-iso (Okazaki and Yoshimura, 2017; 2019) を用い、産業革命前の気候場を再現する定常応答実験を行った。実験設定は、気候モデル相互比較プロジェクトに準拠した。得られた気候場における降水の酸素同位体比は、代表的な古環境復元(氷床コア、鍾乳石)やとよく一致することが確認できた。また、いくつかの課題も明らかとなった。現在、最終氷期最盛期 (約2.1万年前) の気候場を求める定常応答実験を行っている。実験設定は、気候モデル相互比較プロジェクトに準拠した。ただし、海洋境界条件はMIROC大気海洋結合モデルから得られた気候値を用いた。 MIROC5-isoを用いた現在気候再現実験 (JRA25気象場へデータ同化, Okazaki and Yoshimura, 2019) を2010年まで延長し、2で収集した通年観測データとそれぞれ対応する年についての比較を可能とした。 過去の事例解析によって、総観規模擾乱の活動が南極内陸の極端昇温・降水イベントにとって重要であることが知られており (Hirasawa et al., 2000ほか) 、重い水同位体をもたらすことが指摘されている (Fujita and Abe, 2006ほか)。今回の実験結果の解析により、MIROC5-isoにおいても、総観規模擾乱の活動に伴う極端昇温・降水イベントとともに、ドームふじ・ドームCの降水同位体比が重くなっていることが確認された。いくつかのイベントは特によく再現されていると見込まれる。現在、解析中である。
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