研究課題
南極氷床コア水同位体比の解釈においては、氷床コア水同位体比が南極内陸の平均的な気温を記録するとの暗黙の仮定が、長年に渡って適用されてきたが、近年では、総観規模大気循環に伴い数日スケールでイベント的に比較的大量の降水と昇温をもたらす現象が、南極内陸で頻繁にあることが明らかとなってきている。本研究では、MIROC5-isoを用いて1981-2010年の再現実験を行った。これにより、総観規模大気循環に伴う数日スケールでの降水現象が、特に冬の南極降水同位体比に温暖バイアスを生じさせることを統計的に示した。また、日本のドームふじ基地においては、SAM(南半球環状モード)の符号(正負)により、降水同位体比と現地気温の対応関係が遷移することを明らかにした (以上、Kino et al., 2021, Journal of Geophysical Research, Atmosphere)。さらに、上記の遷移には、本質的にはSAMによるブロッキング現象の頻度の変調が重要であることを明らかにした上、大気循環の南極降水同位体比決定に果たす役割がLGM(約2万年前の最終氷期最盛期)においても共通することを確認した。2種類の独立な海洋表層境界条件によるLGM実験をそれぞれ行ったところ、従来研究で指摘されてきたLGM海氷面積の不確実性に加えて、南半球中緯度の海面水温勾配の不確実性が、南極氷床コア同位体比の再現に重要であることわかった。このことは、海面水温勾配の変化が、SAMを含む大気循環に影響することで、ドームふじ降水同位体比を変調することによることもあきらかとなった。以上により、氷床コア水同位体比変動から復元される、過去の南極気温変動の不確実性は、従来期待されていたよりも大きいとの示唆を得た。以上の結果について、論文にまとめ、国際誌へ投稿準備中である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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