ショウジョウバエの色覚を司るR8視神経軸索投射において、一回膜貫通型タンパク質のGogo、七回膜貫通型カドヘリンFmiが段階的にカラム上への正確な投射、糸状仮足を制御する事で軸索-カラム間の1対1対応を可能としている事が示唆されている。このような機能の切り替えが、Gogoの細胞内チロシン残基のリン酸化に伴うFmiに対して協調的/拮抗的な機能の切り替えによることが示唆されていた。また、Gogoのリン酸化にインスリンレセプターが機能している事が確認されている。そこで、インスリンによってGogoの機能的二面性が制御されているのではないかと考え、Gal4/UASシステムにより、インスリンを分泌している細胞を可視化した。その結果、視覚野においてdilp6と呼ばれるインスリンの一種が脳表層、皮質に存在するグリア細胞において発現している事が確認された。さらに、dilp6の発現が確認されたこれらのグリア細胞特異的にインスリンの放出を抑制したところGogo変異体と同様な表現型が得られた。以上の結果から、Gogoの機能的二面性は、グリア細胞由来のインスリンシグナルによって制御されていることが示唆された。 発生初期におけるグリア細胞に着目をしていたところ、興味深いことに、グリア細胞がMedullaカラムの中心に存在していることを発見した。さらに、Fmiが実際にカラム中心のグリア細胞において局在していること、グリア細胞特異的fmi変異体において、R8成長円錐のカラム中心への異常な投射パターンが確認された。 これらの結果から、R8上Gogo-Fmiはグリア細胞由来のシグナルをターゲットとして認識し、段階的なR8軸索投射の制御をしている事が示唆された。
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