研究課題
本年度は、αアドレナリン受容体(AR)の下流で開口したTRPC6チャネルを介する亜鉛イオン(Zn2+)流入がβARシグナルおよび心筋の陽性変力作用の強さを調節するという新たな知見を得た。(1)TRPC6チャネルによる心筋βARシグナリング強度の調節①近接する2タンパク質を標識するproximity ligation assay(PLA)法を用いてTRPC6とβ1ARの共局在を観察した結果、洞房結節細胞と比較して、左心室心筋細胞で有意に多く存在していた。②一定の電気刺激をかけた心筋細胞において、βAR選択的アゴニスト処置後に見られる細胞内カルシウムイオン濃度変化はTRPC6欠損マウスの心筋細胞で減弱していた。③ラット初代心筋細胞にcAMP検出FRETプローブを発現させ、β受容体刺激後のcAMP産生量を評価した。siRNAでTRPC6をノックダウンした心筋細胞では、β受容体刺激後のcAMP産生量が低下した。(2)αAR-TRPC6-Zn2+経路によるβARシグナル制御①心筋細胞に細胞内亜鉛を遊離させる試薬を処置し、細胞内亜鉛プール量の比較を行った。野生型と比較してTRPC6欠損マウスの心筋細胞で有意に細胞内亜鉛プール量が減少していた。②α1AARとTRPC6を共発現させたHEK293細胞に、細胞外にZn2+が存在する条件下で内因性リガンドであるノルエピネフリン(NE)を処置すると、刺激依存的なZn2+流入が観察された。③ラット初代心筋細胞にαAR阻害剤および細胞内亜鉛キレート剤を処置し、NE刺激を行うと細胞内cAMP産生量が低下した。また、細胞外にZn2+が存在する条件下でαAR活性化剤を前処置し、βAR刺激を行うと細胞内cAMP産生量が増大した。④血管拡張薬ヒドララジンの投与により、循環反射応答を惹起した。TRPC6欠損マウスでは循環反射応答に伴う陽性変力作用が減弱していた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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