研究実績の概要 |
本研究の目的は痛み感知分子の一つであるTRPV1チャネルとα2アドレナリン受容体の細胞レベル及び個体レベルでの機能的関連性を明らかにし、新規疼痛調節機構を解明することである。脊椎動物には痛みを「感知」する機構に加えて「緩和」する機構も備わっている。中枢神経系ではα2受容体が鎮痛作用の発揮に関与していることが報告されているが、末梢神経系ではほとんど検討されていなかった。本研究者はこれまでに単離した末梢感覚ニューロン (DRGニューロン)を用いて、α2受容体の活性化に続くアデニル酸シクラーゼの活性低下、cAMPの産生低下、プロテインキナーゼAの活性低下の結果、TRPV1の活性が抑制されることを電気生理学的に証明した。2019年度にはラットを用いた行動実験により個体レベルでカプサイシンや侵害性の熱、ホルマリンなどによって誘発されるTRPV1の活性化に随伴する疼痛関連行動がα2受容体の作動薬であるクロニジンによって局所性に抑制されることを見出した。また、生化学的実験により主に3つあるα2受容体のサブタイプ(α2a, α2b, α2c)のうち、α2c受容体のmRNAが最も多くDRGニューロンに発現していること、そして免疫組織学的実験によりTRPV1とα2受容体が同一ニューロンの細胞体に発現していることを明らかにした。2020年度はこれらの研究成果をまとめ、国際学術誌に投稿した。Reviewerから、さらに特異的なTRPV1作動薬を用いてクロニジンがTRPV1関連性の疼痛行動を抑制するのかどうかの検証など多くの追加実験を求められたため、投稿論文のための追加実験を行なった。現在は追加実験を完了させ、再投稿中である。
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