ヒトの腸内細菌叢は、ヒトの健康に大きな影響を及ぼすことが近年明らかとなっている。しかし、腸内細菌叢は薬の服用(特に抗生剤)などで頻繁に、かつ継続的に攪乱を経験し、細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)は肥満や炎症性腸疾患などの身体への悪影響を及ぼすことが報告されている。近年では、抗生物質によるディスバイオシスの治療の一環としてプロバイオティクスが使われているが、実際の効果については未解明な点が多い。 本研究ではマウスを用いて、ディスバイオシス後の回復においてのプロバイオティクスの効果を検証した。3種類の抗生剤を使用し、プロバイオティクスとしてはBifidobacterium bifidum JCM 1254 を使用した。抗生物質投与後、いずれかの回復処置を行った:1)プロバイオティクス投与(B. bifidum); 2) 健康なマウスからの糞便移植(FT); 3) 自然回復(Natural Recovery)。各週、菌叢解析のため、糞便サンプルを回収した。回収した糞便サンプルからゲノムを抽出し、NGSを用いた16S rRNA 解析で菌叢解析を行った。腸内細菌叢のα多様性を評価し、回復を評価するためには、Bray-Curtis Index of Dissimilarity を使用した。宿主の健康状態を評価するためには、体重と盲腸の重さを測り、また腸管組織の炎症系遺伝子の発現をqPCR で測定した。 結果として、腸内細菌叢のレスポンスは、抗生物質の種類で大きくことなることが明らかとなった。特に一回目のVancomycin 投与ではProteus属細菌など、Proteobacteria 門に属する炎症系の菌の上昇がみられた。また、Vancomycin 投与によって、盲腸は肥大化し、コントロールと比べて2 倍の重さになったが、プロバイオティクス投与によって盲腸の肥大化や炎症が抑制された。
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