令和2年度は、1)「入試ミス」の記事分析に関して、前年度の分析過程から、新聞記事に加えて入試ミスへの人々の意識を扱うことが多いと考えられる雑誌記事にも対象を広げて分析を行った。雑誌記事を含めたことでより直接的に入試ミスへの人々の意識を捉えることができ、また新聞・雑誌記事の分析からは入試ミスが問題化する社会的背景についても検討することができたため、それらの知見を投稿論文としてまとめる作業も進めた。 2)学歴ロンダリングに関する日米インタビュー調査ついては、社会情勢から当初計画通りの研究の実施が困難であったため、インタビューの国際比較から、より詳細に日本国内での批判の論理を検討するため「学歴ロンダリング」記事分析に研究計画を大きく変更して研究を進めた。新型コロナウイルスの影響から国内調査は一部オンラインに切り替え対応したが、延期していたアメリカ調査は、オンラインも含め調整していたものの年間通して感染状況が悪く調査が困難であり、また新規の対象者を得ることも難しい状況であった。そこで、当初計画にはなかった学歴ロンダリングに関する記事分析を行うことで、日本における学歴ロンダリングへの批判の論理をより多元的に検討することとした。具体的には、学歴ロンダリングを扱う新聞・雑誌記事を収集・分析し、これまでの日本でのインタビュー調査の知見とあわせて学会報告を行った。記事分析を用いたことで、記事数の推移から学歴ロンダリングへの社会的関心の変化を検討でき、また批判のロジックに関してもロンダリングを可能にする構造的要因への批判もみられるなど、インタビュー調査からは捉えられない点を補完する重要な知見が得られた。 以上を踏まえ、正統な選抜の揺らぎや非正統とされる選抜への批判といった受験主義が発露する場面に着目したそれぞれの分析結果を統合し、日本型の教育選抜とその現代的な変容についての議論を進めた。
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