研究課題/領域番号 |
19J14640
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
小菅 祥平 青山学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | 透明アンテナ / グラフェン / 5G / CVD |
研究実績の概要 |
本研究では、2次元シート炭素材料グラフェンを電極材料とする、光学的に透明なアンテナの、特性制御と設計手法の確立について取り組んでいる。今年度は特に以下の3点に取り組んだ。 (1) 研究実施前のグラフェンのシート抵抗値は約750 Ω/sq 、可視光透過率は約97 % であった。本年度では、グラフェンへのイオン液体を用いたキャリアドーピングと、3層の乱層積層を行い、可視光透過率90 %以上かつ、シート抵抗値が約80 Ω/sq というグラフェン膜を作製することができた。本研究の目的の1つであるアンテナの特性制御の達成に向けて前進したということに意義がある。また設計の難易度の観点からも、グラフェン膜の低抵抗化は好適であるため、本研究成果の重要性は高い。 (2) 今年度では、マイクロ波帯における金属とグラフェン界面におけるコンタクト成分を詳細に評価した。その結果、マイクロ波帯では直流帯に比べ電流の律速の強さは1/100以下であることがわかった。本成果は設計における課題であった給電構造の設計指針が確立したことに意義がある。またマイクロ波帯におけるコンタクト成分の評価が進んだことは、本研究のみならず、グラフェンのマイクロ波帯におけるデバイス応用の分野に知見をもたらすという重要性がある。 (3) グラフェンを厚さゼロのシートとして物理構造をモデル化し、そのシートの境界条件にインピーダンスを課す電磁界解析を行った。その結果、項目 (1) で作製されたシート抵抗値 80 Ω/sq のグラフェンを電極材料として用いたアンテナの特性は、金属アンテナの特性に近しいことがわかった。その後実際にモノポールアンテナを作製するところまで取り組んだ。本成果は設計における課題であったグラフェンアンテナの電磁界解析におけるモデル化手法が明らかになったということに意義がある。そして今後アンテナの実測をするうえで基準となる成果が得られたことに重要性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、可視光透過率が90 %以上であり、シート抵抗が80 Ω/sq というグラフェン膜の作製に成功している。この低抵抗グラフェン膜はアンテナ材料として十分に使用可能であるということを電磁界解析によって明らかにできた。さらに金属/グラフェン界面のコンタクト特性をマイクロ波帯において明らかにすることで、給電構造の最適化に向けた知見を得ることができた。このことから、本研究の目的であるグラフェンアンテナの特性制御と設計指針の確立という2つの目的の達成に向けた土台が築けたといえる。特に特性制御に関しては、グラフェンの電気特性の制御方法が確立したため、大半が達成できたと判断できる。 以上のように、2年目に向けて良いスタートができたと思われるが、計画していたWheeler cap法による放射効率の測定系の立ち上げに取り組めておらず、その点に関しては計画に若干の遅れが生じていると思われる。 以上のことを踏まえると、おおむね期待通り研究が進展したといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度作製できた高可視光透過率と低抵抗を併せ持つグラフェン膜を電極材料とするモノポールアンテナのアンテナ特性を評価する。具体的にはグラフェンモノポールアンテナの反射特性、放射パターン、利得を評価する。以上の特性を評価する研究環境はほぼ整備されている。これに加え放射効率、電流分布、そして入力インピーダンスを評価するために、研究環境を整備し、評価系を立ち上げることを目指す。 以上で得られた特性を、今年度までに取り組んできた電磁界解析結果へフィードバックし、設計手法の精度を向上させる。
|