研究課題/領域番号 |
19J14715
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓大 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | MEG / fMRI / meta-analysis / 階層ベイズ推定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、脳活動の速い成分に含まれる情報を対象とした脳情報デコーディング技術を確立し、実験参加中の被験者の動的な脳内表現を可視化することである。 脳活動データから脳内情報を読み取るデコーディング研究は、脳のどの部分にどういう情報が含まれているか、という疑問に答えることができる。高いデコーディング精度実現のためには空間情報が重要であるため、従来の研究では空間分解能に優れる機能的MRI装置(fMRI)が主に用いられてきた。しかしながら、時々刻々と変化するヒトの脳内の情報を捉えるには、fMRIの時間分解能の低さが障害となる。 そこで本研究では、ミリ秒単位の時間分解能を持つ脳磁図装置(MEG)と、一万件を超える過去のfMRI脳研究により得られた知見(メタ分析結果)を組み合わせることで、時空間分解能ともに優れた脳活動の推定を実現し、目的の達成を目指す。 令和元年度は、MEGデータとメタ分析結果の統合方法の開発およびその基礎となる統計的機械学習、信号処理技術の習得に取り組んだ。その成果として、関連度自動決定法を拡張した階層ベイズモデルを作成した。そして提案モデルを用いて、シミュレーションデータを対象とした脳活動推定を行い、正しく脳活動が推定されていることを確認できた。また、実計測データにも同様に、提案モデルを用いた脳活動推定を行った。結果、過去の知見と一致する部位に脳活動が推定できたと同時に、実験参加者が提示された刺激に対応する脳内表現を可視化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度前半は、MEGデータとメタ分析結果の統合方法に関する基礎的な検証を行った。検証により、これらのデータを適切に組み合わせることで、MEG信号の活動源推定時に生じる偽陰性の大幅な抑制につながることが明らかになった。一方で、誤ったメタ分析結果を用いてしまった場合には、推定活動源の歪みが生じ、偽陽性の活動が多く発生することが明らかになった。これらの成果は、国内外の学会にて発表した(電子情報通信学会における発表で、IEEE Computational Intelligence Society Japan Chapter Young Researcher Awardを受賞)。 年度後半は、前半に得られた知見を踏まえて、関連度自動決定法を拡張した階層ベイズモデルを作成した。このモデルの大きな特徴は、MEG信号から活動源推定を行うと同時に、被験者の脳内表現を代表するキーワードを可視化できることである。脳活動シミュレーションにより作成したデータを用いて、提案モデルの有効性を検証した。検証の結果、活動源の推定精度は既存の手法よりも上回っていることが確認できた。推定キーワードに関しても、シミュレーション時に設定した内容が正しく反映されていることを確認できた。提案モデルをインターネット上で公開されている実計測データへ適用したところ、従来の知見と一致する部位に脳活動が推定できたと同時に、実験参加者が提示されていた刺激内容に対応するキーワードを推定することができた。これらの成果は、次年度中に国際誌への投稿を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
現在の提案モデルでは、観測データからパラメータの推定に多くの時間を費やすことが障害となり、多様な脳活動データによる検証が不十分である。そこで、次年度はパラメータ推定方法を高速化し、より多くのデータを用いた提案モデルの検証を進める。また、現在のMEGよりも体動ノイズ耐性の高い新型MEGを導入し、 計測データの質的向上を試みる。
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