研究課題/領域番号 |
19J14873
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小澤 柊太 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドベータ(Aβ) / 光酸素化 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)は認知症の主たる原因疾患である。ADの発症原因として、脳内にアミロイドβペプチド(Aβ)が凝集・蓄積することが挙げられる。そのため、ADの治療・予防法として、Aβの凝集を抑制すること、または蓄積したAβを代謝することが有効であると考えられてきたが、未だ有効な治療法は存在しない。そこで、申請者らはAβの凝集を制御するために、Aβに対する人工的な酸素修飾法(光酸素化)に着目した。光酸素化とは、光によって活性化される低分子化合物を用いて、Aβ特異的に酸素修飾を施すものである。申請者は、光酸素化をAβが十分に蓄積したADモデルマウスに行ったところ、Aβの代謝が促進されることを発見した。しかしながら、この光酸素化によるAβの代謝促進メカニズムは不明である。このメカニズムの解明は、凝集Aβの代謝耐性に関する知見に繋がる可能性も期待されるため、これを目的に研究を遂行した。 申請者は、光酸素化されたAβが脳内で代謝されやすいことをin vivo実験系により発見した。その代謝促進に関わる細胞として、脳内での免疫担当細胞であるマイクログリアに着目した。マイクログリアは、①Aβを細胞内に取り込んだ後、②細胞内の酵素を用いてAβを分解することが知られている。そこで、マイクログリアが、光酸素化Aβの代謝亢進に①②の機序で関与しているという仮説を立て、マウスマイクログリア株化細胞(MG6)を用いて実験を行った。この結果、光酸素化はマイクログリアによるAβの取り込みに影響を及ぼさず、取り込まれた後の分解を促進する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規抗Aβ創薬ストラテジーである光酸素化により観察される脳内Aβ代謝促進のメカニズムを一部解明することができた。in vivoモデルでも脳内インジェクションモデルを用いて、光酸素化Aβの代謝が速いことが確認されたため、より詳細なメカニズム解明に繋がり、重要な研究成果を見出したものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
マイクログリアによるAβの分解機構として、リソソーム内での酵素による分解に着目する。リソソーム内分解酵素に対する阻害剤として、クロロキン等を用いることで、同部位での分解が行われているかを確認する。次に、光酸素化Aβ分解を有意に促進する酵素を見つけるために、既知のAβ分解酵素に対する阻害剤を用いて検討を行う。同時に、光酸素化によってマイクログリアの遺伝子発現が変化する可能性についても検討を行う。特に、マイクログリアの活性化に重要なIba1やCD11bに着目する。 次にin vivoでもマイクログリアによる分解促進が重要であるかを検討する。マイクログリアを消失させることのできる薬剤を用いて検討を行う。野生型マウスに対して本薬剤を投与し、マイクログリアを消失させた後、脳内に光酸素化Aβを注射する。この光酸素化Aβの代謝速度が、薬剤非投与群と比較して減少するかどうかを生化学的に解析する。 また、新たに開発された血液脳関門透過性の高い低分子化合物を用いた光酸素化も行う。これまでは、脳内に直接注射することで薬剤を脳に送達してきたが、新規薬剤を用いれば、非侵襲的に光酸素化を行うことができる可能性がある。それによっても、これまでと同様に光酸素化Aβが分解されるかも検討する。また、Aβ蓄積後に生じるグリア細胞の活性化や認知機能の低下が、光酸素化によって抑制可能かどうかについても、本モデルを用いて検討を行う。
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