研究課題/領域番号 |
19J14887
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大谷 俊介 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ホウ素 / アゾメチン / 共役系高分子 / サーモサリエント |
研究実績の概要 |
(A) 縮環型アゾメチンホウ素錯体ポリマーによる電場配向フィルムの作製とメカノフルオロクロミック特性の付与 薗頭・萩原クロスカップリング反応を用いて、縮環型アゾメチンホウ素錯体ユニットの配向方向が揃ったレジオ選択的なポリマー及びランダムに配置されたポリマーの合成に成功した。これらのポリマーを薄膜状態において比較したところ、レジオ選択的なポリマーの方が高い結晶性を有していることが示唆された。この結果は、配向方向を揃えて重合することによって生じた大きな双極子モーメントによって、高分子鎖の配向性が向上したことを意味すると言える。また、発光特性についてもアモルファス性の高いレジオランダムなポリマーと大きく異なる性質もつことが明らかになった。この結果は、縮環型アゾメチンホウ素錯体を主鎖に含むポリマーの発光特性は集合状態に大きく依存したものであることを意味しており、力学的刺激によるポリマー主鎖の配向状態の変化を発光特性の変化と連動させることが十分に可能であると期待できる。 (B)置換型固溶体の形成によるサーモサリエント (TS)挙動の改質 先行研究においてTS効果を示した縮環型アゾメチンホウ素錯体のフェニル基をピリジン環に変更した化合物の合成を試みたが、ピリジン環はホウ素化反応の阻害部位として働くために合成が困難であった。一方で、ハロゲン基やメチル基などの置換基を導入した化合物の合成には成功しており、これらはTS効果を示した化合物と同じ空間群を有することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(A)の研究結果については学会にて発表を行った。さらに、レジオ選択的なポリマーとレジオランダムなポリマーと比較を行うことで集合状態と発光特性の相関を明らかにすることができており、メカノフルオロクロミック特性を有する高分子薄膜を実現するうえで大きな進展であったと言える。 (B)については、当初予定していた分子とは異なるが、新たに合成した縮環型アゾメチンホウ素錯体類縁体は同じ空間群を有していることから、研究目的である「サーモサリエント効果を示す結晶に固溶化させる」という目的の遂行に支障はないものと考えられる。以上のことから、総合的に判断して本研究課題は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(A)については電場配向を行うことで縮環型アゾメチンホウ素錯体ポリマーの配向性の向上を目指す。偏光吸収スペクトルや各種X線回折法を用いて電場印加前後での配向性について調査する。メカノフルオロクロミック特性については、圧力印加部位を画像解析によって光学測定を実施することで評価する予定である。 (B)については、既にTS効果が確認された化合物をホストとし、今回合成した類縁体をゲストとすることで固溶体化を目指す。得られた固溶化した結晶に対して示差走査熱量測定を行うことで転移温度の変化について調査する予定である。
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