研究課題/領域番号 |
19J14892
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
近藤 早希 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 消化管 / 消化・吸収 / アミラーゼ / 消化酵素 / SGLT1 / GLUT2 / 運動 / 食欲 |
研究実績の概要 |
スポーツ選手は、運動量が著しく増加する合宿中などにおいて、エネルギー不足とならないように普段よりも多くの食事を摂取する必要がある。しかしながら、実際のスポーツの現場では、食事量がむしろ減少してしまう選手が数多く存在する。多くの場合、このように食事量が減少してしまう原因が「内臓疲労」、すなわち、長時間の激しいトレーニングによって、胃や小腸における栄養素の消化・吸収機能が低下することにあると考えられている。しかしながら、長時間の激しい運動によって消化・吸収機能がどのような影響を受けるのかについては、ほとんど明らかとされていない。そこで、本研究では、激しい運動により食事量が減少した状況を再現したうえで、膵臓や小腸における消化・吸収の過程について検討を行い、それらの機能がどのような影響を受けているのか解明することを目的とした。 まず、本年度は、1時間もしくは6時間の運動時間の異なる一過性水泳運動をラットに行わせた場合に、膵臓アミラーゼ活性さらには糖質の吸収に関わる小腸の糖輸送体発現量にどのような適応がみられるのか検討を行った。その結果、一過性水泳運動は、小腸における糖輸送体の発現量には大きな影響を及ぼさないものの、長時間の運動を行うことで、膵臓のアミラーゼ活性が減少し、糖質の消化機能が低下することが明らかとなった。また、長時間の運動を行った場合、運動終了から24時間の回復期間中の摂餌量が減少すること、さらには、回復期間中の摂餌量と回復後における総アミラーゼ活性の間に正の相関傾向が認められることが明らかとなった。したがって、一過性の長時間運動は糖質の消化機能を低下させるということ、さらには、このような持久的運動に伴う消化機能の変化は、運動後の摂餌量の減少に大きな影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、運動時間の異なる一過性運動が糖質の消化・吸収に関わる酵素ならびに輸送体へ及ぼす影響について検討を行った。その結果、一過性の長時間運動により糖質の消化機能が低下することが明らかとなり、さらにはその適応と摂食行動との関連についても一部解明することができた。したがって、研究は当初の計画通り順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度と同様の持久的運動を長期間トレーニングさせた場合に、消化・吸収機能がどのような影響を受けるのか検討する予定である。また、本年度の結果から、長時間運動終了直後には糖質の消化機能が低下することが明らかとなったため、そのような状況において好ましい栄養摂取法を明らかにすべく、骨格筋のグリコーゲン回復と併せて検討を行う予定である。
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