Ｘ線自由電子レーザーによるナノクラスター回折実験：非平衡核生成ダイナミクスの解明

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19J14969
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 仁王頭 明伸 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
• 研究期間 (年度): 2019-04-25 – 2021-03-31
• キーワード: XFEL / クラスター / 核生成

研究実績の概要

報告者は本年度、国内のX線自由電子レーザー施設SACLAを利用して得られた単一キセノン（Xe）ナノクラスターの回折実験の詳細なデータ解析を進めた。実験データの解析により得られた粉末X線回折パターンと数値シミュレーション結果の比較から、Xeクラスターの構造はバルクの安定構造であるfcc構造と2次元の最密充填層がランダムに積層したランダム六方最密充填（rhcp）構造の和で説明できることが明らかとなった。さらに単一Xeクラスターの回折像に出現したストリークパターンと呼ばれる特徴的な回折像に注目し、単一粒子の内部構造の解明を試みた。昨年度開発した回折像のシミュレーションプログラムを用いて、実験で得られた回折像を再現する構造について詳細な検討を行った。その結果、一部のXeクラスターの内部において、同程度の体積を持つfcc結晶とrhcp結晶が積層方向に結合して共存していることが強く示唆された。これらの観測結果は、Xeクラスターの核生成・成長過程においてまず準安定相であるrhcp構造が生成し、その後より安定なfcc構造への転移が起こるというシナリオにより説明された。このような核生成・成長直後の構造ダイナミクスに関する知見は、XFELを利用したシングルショットのX線回折実験により初めて明らかとなったものである。本研究で示唆された核生成・成長のシナリオは、本研究で対象とした希ガス系のみならず他の系で普遍的に成り立つ可能性があり、したがって新規材料開発から気象学に至る幅広い分野への応用が期待される。報告者は上記の研究成果について複数の原著論文を筆頭著者として執筆し学術誌に投稿するに至った。

現在までの達成度 (段落)

令和2年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和2年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [国際共同研究] Paul Scherrer Institute(スイス)
  • 国名: スイス
  • 外国機関名: Paul Scherrer Institute
• [国際共同研究] Turku University(フィンランド)
  • 国名: フィンランド
  • 外国機関名: Turku University
• [国際共同研究] ELI-NP(フランス)
  • 国名: フランス
  • 外国機関名: ELI-NP
• [国際共同研究] Elettra(イタリア)
  • 国名: イタリア
  • 外国機関名: Elettra
• [雑誌論文] Formative period in the x-ray-induced photodissociation of organic molecules (2021)
  • 著者名/発表者名: Kukk E.、Fukuzawa H.、Niskanen J.、Nagaya K.、Kooser K.、You D.、Peschel J.、Maclot S.、Niozu A.、Saito S.、Luo Y.、Pelimanni E.、It?l? E.、Bozek J. D.、Takanashi T.、Berholts M.、Johnsson P.、Ueda K.
  • 雑誌名: Physical Review Research 巻: 3 ページ: －
  • DOI: 10.1103/PhysRevResearch.3.013221
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Multi-channel photodissociation and XUV-induced charge transfer dynamics in strong-field-ionized methyl iodide studied with time-resolved recoil-frame covariance imaging (2021)
  • 著者名/発表者名: Allum Felix、Anders Nils、Brouard Mark、Bucksbaum Philip、Burt Michael、Downes-Ward Briony、Grundmann Sven、Harries James、Ishimura Yudai、Iwayama Hiroshi、Kaiser Leon、Kukk Edwin、Lee Jason、Liu Xiaojing、Nagaya Kiyonobu、Niozu Akinobu、Driver Taran、Forbes Ruaridh（14名省略、17番目）
  • 雑誌名: Faraday Discussions 巻: － ページ: －
  • DOI: 10.1039/d0fd00115e
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Photoemission from the gas phase using soft x-ray fs pulses: an investigation of the space-charge effects (2020)
  • 著者名/発表者名: Verna Adriano、Stefani Giovanni、Offi Francesco、Gejo Tatsuo、Tanaka Yoshihito、Tanaka Kenta、Nishie Tatsuru、Nagaya Kiyonobu、Niozu Akinobu、Yamamura Ryosuke、Suenaga Taiga、Takahashi Osamu、Fujise Hikaru、Togashi Tadashi、Yabashi Makina、Oura Masaki
  • 雑誌名: New Journal of Physics 巻: 22 ページ: 123029～123029
  • DOI: 10.1088/1367-2630/abcbc6
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Dissociation and ionization dynamics of CF3I and CH3I molecules via pump-and-probe experiments using soft X-ray free-electron laser (2020)
  • 著者名/発表者名: Gejo Tatsuo、Nishie Tatsuru、Nagayasu Takahiro、Tanaka Kenta、Tanaka Yoshihito、Niozu Akinobu、Nagaya Kiyonobu、Yamamura Ryosuke、Futamata Nozomi、Suenaga Taiga、Takahashi Osamu、Togashi Tadashi、Owada Shigeki、Fujise Hikaru、VERNA Adriano、Yabashi Makina、Oura M
  • 雑誌名: Journal of Physics B: Atomic, Molecular and Optical Physics 巻: － ページ: －
  • DOI: 10.1088/1361-6455/abcd20
  • 査読あり / 国際共著
• [学会発表] XFEL利用の単粒子X線回折で探る希ガスナノ粒子の結晶化ダイナミクス (2021)
  • 著者名/発表者名: 仁王頭明伸
  • 学会等名: 物理学会第76回年次大会
• [学会発表] Ultrafast structural dynamics of nanoplasmas probed by time-resolved X-ray diffraction (2020)
  • 著者名/発表者名: Akinobu Niozu
  • 学会等名: Conference on Laser and Synchrotron Radiation Combination Experiment (LSC) 2020
  • 国際学会