研究実績の概要 |
本研究では、407の完全長ウイルスゲノムおよび10,596のウイルスゲノムの断片を得ることが出来た(> 10 kbp)。これらのウイルスゲノムの季節変動は、菌叢解析による細菌群集の結果とも一致しており、宿主である細菌の動態を反映しているものと考えられる。ある時期に出現頻度が増して優占したウイルスは、そのときの環境に適応した活性の高い細菌への感染によると考えられる。つまり、そのときの物質循環にとって重要度の高いウイルスである可能性が高い。 そこで、我々はどのウイルスがどの細菌に感染するのか、宿主の推定を行った。具体的には(1)我々が得たウイルスゲノムの塩基配列と既存のウイルス―宿主データベース中の塩基配列の類似性、(2)ウイルスゲノム中に存在するマーカー遺伝子の探索、(3)ウイルスゲノムの塩基配列と細菌ゲノムの塩基配列の一致性である。その結果、2,610のウイルスゲノム(うち完全長ゲノムは96種)について宿主細菌(門レベル)を予測することが出来た。その中には、琵琶湖の細菌群集で大きな割合を占めるActinobacteria、Alphaproteobacteria、Gammaproteobacteria、Bacteroidetes、Chloroflexi、Cyanobacteriaが多数含まれていた。 我々は琵琶湖のウイルスの多様性と季節変動を明らかにすることに成功した。そして菌叢解析の結果やバイオインフォマティクスによる宿主の予測と合わせて、琵琶湖で重要であると考えられる細菌種およびウイルス種の候補を水深や季節ごとに挙げることができた。
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