時間と波長の同時計測は幅広い分野でされており,バイオサイエンスや化学の分野では,複雑で高価な光学系によって時間や波長などの高次元な光の情報を計測 していた.しかしながら,これらの計測には時間や金額面で大きなコストが必要になる.一方,情報系では,計算処理によってRGB 画像から光学現象の解析を 行っていた. しかしながら,光学現象の解析には時間や波長などの詳細な情報が必要なために縮退した情報では不十分である.本研究では,複雑で高価な装置を 用いて行われてきた高次元な光計測をハードウェアとソフトウェアの協調設計によって再構築し,光学系・電子回路・計算処理の工夫によって簡易なハードウェ アとソフトウェアの組み合わせで実現することが目的である. 本年度は,前年度に続き分光超解像におけるキャリブレーションの問題を解決する方法について取り組んだ.超解像によって得られた分光分布は内部の光学系によって生じるボケ関数によって分解能が低下する.これを解決する方法としてボケ関数の推定とその除去が重要になる.しかしながら,分光器のボケ関数は波長依存であるためにすべての計測範囲で推定する事は困難である.そこで,波長軸に対して疎な原子輝線を用いてボケ関数を計測し,輝線間のボケ関数を推定から求める方法を提案した.また,ボケ関数の除去方法として輝度値が負にならない点を利用した非負制約付きの最小二乗法を導入した.実環境で撮影した分光分布に対して提案手法を適用し,本手法の有効性を示した.
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