研究課題
白色脂肪細胞の褐色化-ベージュ脂肪細胞は、ミトコンドリアの脱共役タンパクuncoupling protein 1 (UCP1)を介しエネルギー消費を促進し、糖・脂質代謝を制御する脂肪として注目されている。本研究では、UCP1ルシフェラーゼレポーターアッセイ系を用い化合物スクリーニングを行い、新規の薬剤同定を行うことを目的とした。これまでに上記のアッセイ系を用い、1,000種類の化合物スクリーニングを実施し、複数の化合物を同定した。しかし、更なる大規模な化合物スクリーニングに向け、実験系の安定化及びハイスループット化を行う必要が生じた。現在、CRISPR-Cas9による遺伝子編集により、UCP1ルシフェラーゼのノックインによるレポーターアッセイ系の作成し、以前の細胞株に比べ高感度かつ簡便にルシフェラーゼの蛍光強度を測定する事が可能となった。前述のアッセイ系を用い、現在大規模な化合物スクリーニングに着手している。上記の計画と並行し、エネルギー消費を促す脂肪としてベージュ脂肪細胞と同様に注目される褐色脂肪細胞(BAT)の分化に関与する一つの因子として、テトラヒドロビオプテリン(BH4)に着目し研究を行った。BH4の欠乏したマウスモデル、hph-1マウスを用い、BATの分化が最も促進している新生児期のBATを調べたところ、分化障害が引き起こされており、その分化障害は、hph-1妊娠マウスの母体へのBH4補充により改善することを明らかにした。更に、妊娠マウスへのBH4の投与により、仔マウスの成長後の高脂肪食負荷による体重増加やインスリン抵抗性が抑制されることが明らかにし、胎生期・新生児期のBH4の補充によるBATの分化改善の影響が成長後も持続的に効果を与える可能性が示した。これらより、BH4が褐色脂肪細胞分化の標的になり、また肥満・糖尿病予防の新規の標的になる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
スクリーニングにより複数の化合物を同定したが、新規のレポーターアッセイ系を樹立する必要が生じ、確立に時間を要している
本年度の研究により創出した新たなアッセイ系を用い、より大規模な化合物スクリーニングを行い、並行して同定された化合物について、細胞株への暴露やin vivoの投与実験を行い、その効果及び作用メカニズムに関して明らかにしていく。
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PLOS ONE
巻: 15 ページ: e0229998
10.1371/journal.pone.0229998