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2020 年度 実績報告書

日本近代文学からみる「傷痍軍人」表象 -戦争を語る傷ついた身体-

研究課題

研究課題/領域番号 19J15056
研究機関名古屋大学

研究代表者

市川 遥  名古屋大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2021-03-31
キーワード日本近代文学 / 傷痍軍人 / 傷病兵 / 癈兵 / 軍事援護 / 戦争と文学
研究実績の概要

当該年度は新型コロナウィルスの影響で、調査などの計画が一部中止・変更を余儀なくされたが、資料収集や成果発表はある程度継続して行うことができた。研究実績は主に以下の3点である。
①『傷痍軍人成功美談集』(偕行社、1943年)における美談の型と内容を分析した。美談集は実話を元にしながらも、当時人気を博した大衆作家を起用し、「脚色」をあらかじめ読者に宣言した作品集であった。その「潤色執筆」の効果を、傷痍軍人の模範像を示す「再起奉公」という言葉、そして当時推し進められていた「大衆娯楽型陸軍宣伝」に触れながら考察した。成果については『昭和文学研究』(第83集、2022年9月)に掲載された。
②戦時下の傷痍軍人表象について考えるにあたり、1938年10月以降継続して行われた、軍人援護強化キャンペーンと、それに関わる傷痍軍人表象を考察した。子ども向けの作品集『銃後童話読本』(金の星社、1940年)と一般向けの『軍人援護文芸作品集』(全3輯、軍事保護院、1942~1943年)を取り上げ、文学がどのように加担したかを明らかにする一方で、作品集に現れる援護思想を逸脱する語りについても指摘した。成果については口頭発表を行った上で、論文を『人文学フォーラム』(第5号、2022年3月)に発表した。
③戦後の傷痍軍人表象を考えるにあたり、戦中から90年代まで活動を続け、また文壇に知られた傷痍軍人作家であった直井潔に着目し、作品内の母や妻と結んだケアの関係性に着目することによって、直井の戦争の「傷跡」の語りがいかになされ、また変化したのかについて考察した。その成果については口頭発表を行った上で、論文を坪井秀人編『戦後日本の傷跡』(臨川書店、2022年)に執筆した。
以上の研究を通して、傷痍軍人を描くことの効果や戦略を明らかにするとともに、文学と他メディア、社会的背景との相互関係についても考察することができた。

現在までの達成度 (段落)

令和2年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和2年度が最終年度であるため、記入しない。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「傷」を描くということ──一九四〇年前後の軍人援護強化キャンペーンと傷痍軍人表象をめぐってーー2022

    • 著者名/発表者名
      市川 遥
    • 雑誌名

      人文学フォーラム

      巻: 5 ページ: 49~64

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 大衆作家たちの「潤色執筆」2021

    • 著者名/発表者名
      市川 遥
    • 雑誌名

      昭和文学研究

      巻: 83 ページ: 106~121

    • DOI

      10.50863/showabungaku.83.0_106

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 文学が描いた傷と戦争へのまなざし ─日清戦争後の傷病兵言説と山田美妙「負傷兵」2020

    • 著者名/発表者名
      市川遥
    • 学会等名
      日本近代文学会東海支部 第66回研究会
  • [学会発表] 戦地への想像力 ─傷痍軍人保護キャンペーンと銃後の子どもたち2020

    • 著者名/発表者名
      市川遥
    • 学会等名
      東アジアと同時代日本語文学フォーラム 次世代オンラインフォーラム
  • [学会発表] 傷痍軍人の「戦後」と「傷跡」 ──直井潔の作品をめぐって2020

    • 著者名/発表者名
      市川遥
    • 学会等名
      国際日本文化研究センター共同研究「戦後日本の傷跡」第3回研究会
  • [図書] 戦後日本の傷跡2022

    • 著者名/発表者名
      坪井 秀人
    • 総ページ数
      376
    • 出版者
      臨川書店
    • ISBN
      978-4-653-04517-5

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公開日: 2022-12-28  

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