研究課題/領域番号 |
19J15062
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
菊谷 侑平 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 姿勢決定 / 姿勢センサ / コンピュータビジョン / 超小型衛星 |
研究実績の概要 |
今年度の成果は大きく分け,(a)昨年度までに開発した機器の運用による実証実験と画像データ収集,収集したデータを利用した提案アルゴリズムの改良を行ったこと,(b)改良したアルゴリズムの実証機会である衛星のBBM開発を行ったことの2点である. (a)軌道上実証実験 我々は昨年度までに,深層学習を用いた革新的地球センサ・スタートラッカ「DLAS」の開発に取り組んだ.DLASは,JAXAの「革新的衛星技術実証1号機」に搭載され,昨年度末に地球周回軌道に投入された.本年度はこのDLASの運用に取り組み,提案する姿勢決定アルゴリズムの軌道上実証実験と画像データの収集を行った.実験開始当初は,姿勢決定の前段階である画像識別の精度が低く,姿勢決定に至らなかったが,パラメーター調整を経て姿勢決定成功に至った.使用する地点や時間帯により成功率や精度にばらつきがあるものの,この実証実験により提案する姿勢決定アルゴリズムの有用性が示された.またDLAS実験では,衛星の姿勢情報と関連付けされた画像データを収集している.このデータを利用して,新たに開発を進めているアルゴリズムの評価や改良にも取り組んでいる. (b)衛星のBBM開発 我々はJAXAの「革新的衛星技術実証2号機」にて超小型衛星の打ち上げ機会を獲得しており,この衛星では本研究で開発する姿勢決定アルゴリズムの実証実験も予定されている.本年度は,放射線試験等を経て衛星で使用する部品・機器の選定を行った後,試作に当たるBBMの開発を行った. BBM開発は概ね完了しており,設計の妥当性が示された.また,一部の構成要素については次段階であるEM開発に突入している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した,深層学習を用いた革新的地球センサ・スタートラッカ「DLAS」の運用を通して,提案するアルゴリズムの軌道上実証実験を行った.開始当初こそ所望の成果が得られなかったものの,その後パラメーター調整等を経て,提案する姿勢決定手法の有用性を示すに至った.また,当初目標としていた以上の量の軌道上データ収集が行えた.収集したデータを用いて,今後更なるアルゴリズムの改良が期待できる. さらに,次の軌道上実証の機会でもある超小型衛星の開発も順調に進んでおり,基本設計の後,時間を要する部品選定や単機能試験等を概ね完了させた.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,「DLAS」の運用を経て得た軌道上実験結果の詳細評価や,収集した軌道上データを利用したアルゴリズム改良に取り組む.特に,これまでシミュレーションのみによる評価を行ってきたアルゴリズムに関して,実際のデータを使った際の挙動をフィードバックし改良することで実用化に近づけられると期待できる.ここで得られた研究成果は,随時論文投稿や学会発等行う予定である.また開発中の超小型衛星についても,個別開発してきた機器の統合や,フライトモデル開発に向けた機能試験や環境試験などに取り組む予定である.
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