今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、菱面体晶硫酸イットリウム水和物(水和数は1~3)と硫酸イットリウム3水和物は反応温度域・反応速度の面で化学蓄熱に利用できる可能性があると見出された。しかし、蓄熱密度の面では未だ不十分だと考えられ、更なる材料探索が求められる。 一般に、200度以下の低温で脱水可能な材料は水和反応が遅い場合が多く、このことが従来の材料探索を困難にしてきた。そこで、本研究における材料探索の指針としては結晶構造に着目する。菱面体晶相の水和・脱水反応はホスト格子への水分子の脱挿入という結晶構造に由来するメカニズムに基づいて、比較的速い反応速度で進行する。従って、菱面体晶硫酸イットリウムと類似の結晶構造を持つ材料は同じく水分子の脱挿入及び速い水和・脱水反応が期待できる。候補材料としては、類似する結晶構造を有すると報告されている9種の金属硫酸塩:M2SO4 (M = Sc, Yb, Er, Gd, Dy, Al, Ga, Fe, In)が挙げられる。これらの水和・脱水反応挙動を調査することで、優れた化学蓄熱材料探索を行う予定である。 また、この材料探索により水分子の脱挿入による脱水・水和の反応速度が速い傾向が金属硫酸塩に確認された場合には、水分子の脱挿入が可能な材料を硫酸塩に限らず広く探索することで更に候補材料を見出せる可能性があると考えている。
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