研究課題/領域番号 |
19J15095
|
研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
関根 睦実 創価大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | 硫黄酸化 / 硝化 / 溶存酸素濃度 / 部分硝化 / 有害金属除去 / 無機態窒素 / 微細藻類 / メタン発酵 |
研究実績の概要 |
有機性廃棄物のメタン発酵処理の後段プロセスとして、硫黄酸化・硝化槽(細菌槽)―微細藻類槽による低環境負荷型バイオガス脱硫・消化液処理の研究開発を行う。初年度は、細菌槽について①異なる溶存酸素(DO)濃度が脱硫・硝化能に与える影響の評価と②微生物叢解析を行った。脱硫ガスへの酸素の混入を避けるためには低溶存酸素濃度での運転が好ましいため、0.2または3 mg/LのDOで硫黄酸化・硝化処理を行った。その結果、DO 0.2 mg/Lかつ硫化物高負荷下では硝化能が低下し亜硝酸が蓄積した。NO2-は微細藻類の増殖を阻害するため(詳細後述)、本提案プロセスの細菌槽はDO 3 mg/L以上での運転が適する。細菌槽を介すことでメタン発酵消化液中の各種微量金属(Ca、Fe、Mn、Zn、Al、Co、Cu、Cd、Pb)及びリンが50%以上減少し、塩分濃度は増加した。微細藻類培養時には必須金属やリンの添加が必要だが、有害金属の減少は細菌槽導入の大きな利点である。槽内は、硫化物負荷速度の増加に伴い硝化細菌種が大きく変化し、硫化物耐性が高い種の増殖によって高効率処理が達成されたと考えられた。 微細藻類槽については③異なる無機態窒素が増殖速度に与える影響と④細菌槽排液の培地としての有用性評価に取り組んだ。NH4+、NO2-、NO3-を用いてChlorella sorokiniana NIES-2173を回分培養した結果、NO2-の条件で比増殖速度が低下し、1000 mg-N/Lでは僅か1日で増殖が完全に停止した。本種の窒素源にはNH4+またはNO3-が適する。細菌槽排液を用いた培養では人工培地と同程度の増殖速度が得られ、培地としての有用性が実証された。 研究成果は国内外の学会で発表し、IWA主催国際会議ではベスト25プレゼンテーション賞を受賞した。論文2報が当該分野で評価の高い査読付き学術雑誌に受理された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硫黄酸化・硝化槽(細菌槽)―微細藻類槽による低環境負荷型バイオガス脱硫・消化液処理システム構築に向け、本年度は、細菌槽について①異なる溶存酸素(DO)濃度が脱硫・硝化能に与える影響の評価、ならびに②微生物叢解析、微細藻類槽について③異なる無機態窒素が増殖速度に与える影響と、④細菌槽の排液の培地としての利用特性の評価に取り組んだ。これらの研究を通して細菌槽を運転する上での適切な溶存酸素濃度(3.0 mg/L以上)、および細菌槽排液を用いた微細藻類培養において必須微量金属およびリンの添加が必要であることを明らかにした。また、pH調整のために添加したNaOHの影響で、細菌槽排液の塩分濃度が微細藻類の至適濃度を超えるという課題を抽出した。しかしながら、実際に排液を用いて微細藻類を培養した際には、人工培地と同程度の増殖速度が得られ、培地としての有用性を実証した。提案システムの構築に向けた要素技術は確立しつつあり、本研究課題の達成見込みは高い。したがって、本年度において本研究課題は順調に進展したと結論付けた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究2年目にあたる令和2年度は、本年度の研究により明らかになった適切な運転条件により、まず細菌槽と微細藻類槽のそれぞれを運転する。細菌槽には完全混合型反応槽を用い、硫化水素を含む合成バイオガスとメタン発酵消化液を供給し、バイオガスの脱硫と消化液の硝化を実施する。次に、微細藻類培養槽として、二重円筒型培養槽に人工培地を供給して藻類培養を行う。微細藻類が生成する酸素を細菌槽で利用することを想定し、二酸化炭素の通気によって培養液中の酸素を回収する培養システムを作製する。藻類生産速度の安定を確認した後、両反応槽を連結させて細菌槽排液を微細藻類培養槽で処理し、バイオガス脱硫・消化液処理、ならびに微細藻類生産を同時に達成可能な細菌槽-微細藻類槽 2槽式システムを確立する。得られた処理・生産結果をもとに経済性を試算し、既存のメタン発酵後段処理プロセスと比較することで、提案システムの有用性を評価する。 得られた研究成果を国際学会ならびに国内学会で発表する。学会等で発表した研究成果をもとに、国際学術誌へ投稿する。
|