研究課題/領域番号 |
19J15146
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野本 繭子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 採食戦略 / 環境利用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アフリカ熱帯林に生息する野生マルミミゾウにおいて、利用環境や採食行動に性別差や年齢差があるのかを明らかにすることである。今年度は6月~9月の乾季と11月~3月の雨季の2度の現地野外調査をガボン共和国ムカラバ・ドゥドゥ国立公園にて行った(新型コロナウイルス感染拡大の影響により、3月28日に中断)。 野外調査では、森やサバンナを歩いて糞サンプルを収集し、DNA から性別、大きさから年齢クラス、採取場所から利用環境、内容物から採食内容を調べた。また、森林に5本、サバンナに5本、計10本のトランゼクトを設け、落下果実センサスと糞センサスを行うとともに、ゾウがよく利用する獣道に自動撮影カメラを設置し、撮影個体の性年齢比の推定を試みた。また、畑の持ち主へは被害状況の聞き取り調査を継続して行っている。 また、これまでの調査で蓄積してきたムカラバ地域におけるマルミミゾウの採食品目(果実、樹皮)と、森林での毎木調査の結果、獣道をはじめとしたゾウの痕跡とをGLMを用いて分析し、獣道の道幅はゾウが果実のみを利用する樹種の密度と正の関連があることが明らかとなった。これは、何度も通る大きな道が果樹の近くに多いということを意味している。この成果について、9月に、愛知県犬山市にて開催された国際シンポジウムでポスター発表を行った。 10月~11月中旬にかけては、京都大学野生動物研究センターとの共同利用研究として、村山美穂教授のもとDNA を用いた性判別実験を行った。既に先行研究で示されている方法(Ahlering et al. 2011)では結果が得られなかったため、実験試薬の配分を変えて行ったところ、259サンプル中232サンプル(89.6%)で性別推定を行うことができた。今後は、採食内容や利用環境などとの比較分析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究には、現地フィールドでの野外調査が不可欠である。当該年度において申請者は2度の長期フィールド調査を行った。本年度の調査は順調に遂行できたものの、データ量がやや少ない季節があるため、期待以上とまではいかなかった。 また、成果発表についても本年度は国際シンポジウムでの発表1回のみであったため、今後積極的に行っていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、本年度11月下旬から翌年度6月中旬までを予定していた野外調査を3月下旬で切り上げ、早期帰国をすることとなった。対象としているマルミミゾウは果実や葉を食べるため採食内容は季節差が大きい。そのため、採食内容について論じるには年間を通じた調査が必要不可欠である。調査を短縮したことにより、乾季のデータ量の確保が難しい状況となっているが、まずは集められた雨季のデータを中心に分析を進めていく。海外フィールド調査の再開にはしばらく時間がかかることが見込まれるため、国内での活動が再開でき次第、既に収集できているサンプルについてDNA実験を始めていくことを考えている。
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