構成元素が均一に分布したナノ粒子を固溶体ナノ粒子と呼ぶ。これまで合成されてきた固溶体ナノ粒子は後期遷移金属から構成されるものが主であった。安価で豊富に存在する前期遷移金属も固溶体ナノ粒子の構成元素の候補に挙がるが、合成上の問題からその報告例は少ない。本研究では前期遷移金属と後期遷移金属から構成される固溶体ナノ粒子を合成し、電子状態の解明と物性評価、特に触媒特性の評価を研究目的としている。 本年度は、昨年度合成したMoRu固溶体ナノ粒子のうちRuの割合が高い試料を炭素に担持し電極触媒とし、塩基性溶液中で水素発生反応に対する触媒活性を評価した。Ruのみから構成されるナノ粒子と触媒活性を比較した場合、特定の量の水素を発生させるために必要なエネルギーはMoRu固溶体ナノ粒子の方が低く、高い触媒活性を示すことを明らかにした。また、一般的に水素発生反応において高い触媒活性を示すと言われている白金(Pt)と比較した場合でも、MoRu固溶体ナノ粒子がより高い触媒活性を示すことを明らかにした。一方で、この触媒は長時間使用した際にはMoがMoRu固溶体ナノ粒子から溶出することを種々の測定から確認し、耐久性が低いという課題があることも明らかにした。 また、熱分解で合成したMoRuナノ粒子をさらに水素雰囲気下で熱処理することで調製した炭素を含んだ新規MoRuC固溶体ナノ粒子の物性探索を行った。このナノ粒子は表面が炭素で被覆されていたため触媒活性以外の物性探索を行ったところ、極低温下において超伝導特性を示すことを明らかにした。さらに組成に応じて超伝導転移温度は指数関数的に変化し、組成変化を反映して電子状態が変化していることが示唆された。
|