本研究では、薬剤候補化合物の生体内での治療 (延命) 効果を迅速に評価できる in vivo 評価系「カイコ抗酸菌症モデル」を用いて、治療薬の新規リード化合物を天然資源から発見することを目的に、継続して探索研究を行っている。 当該年度は、新たに当研究室で作製した陸棲および海洋微生物の培養液約 600 サンプルをスクリーニングした。その結果、Mycobacterium avium に感染させたカイコに対して顕著に治療効果を示す放線菌培養液を見出すことに成功した。当該年度中に活性物質を特定するには至らなかったが、現在も引き続き本活性物質の単離精製を試みており、今後の進展が期待される。 また、前年度に単離したカイコ M. avium 感染モデルで効果を示す既知化合物 ohmyungsamycin 類、chartreusin および griseoviridin については、カイコモデルを含む詳細な活性評価を行った。その結果、化合物によって迅速発育菌 (M. smegmatis および M. abscessus) と遅速発育菌 (M. avium および M. intracellulare) に対する生体内での治療効果が異なり、ohmyungsamycin A は特に遅速発育菌において有効であることを見出した。この成果は、in vitro では明らかにできない in vivo 様モデル特有の結果であり、さらにマウス感染モデルでは評価に長時間を要することから、迅速な評価を可能にするカイコ抗酸菌症モデルは、抗酸菌症治療薬の開拓に新たな知見をもたらす可能性がある。
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