研究課題
犬の頭頸部扁平上皮癌 (HNSCC) は従来の治療法では制御が困難であり、新たな治療戦略の確立が必要である。これまでの研究で、特定の犬のHNSCC株化細胞はEGFR阻害剤アファチニブおよびオシメルチニブに対して感受性を有することが明らかとなった。さらに、これらの阻害剤は従来の標的分子ではなく、新規の標的分子を抑制する可能性が考えられた。そこで当該年度では、まず犬のHNSCCにおけるアファチニブおよびオシメルチニブの新規治療標的分子を明らかにするため、犬のHNSCC株化細胞を用いてErbBファミリー蛋白の発現とリン酸化の状態、既知のアファチニブおよびオシメルチニブ標的分子の塩基配列、細胞内シグナル伝達分子のリン酸化について解析した。また、アファチニブ感受性の株化細胞Aを用いたリン酸化蛋白質の網羅的解析も行った。その結果、既知の標的分子の蛋白および遺伝子解析からはアファチニブ感受性細胞における標的分子を特定することができなかった。一方、アファチニブ感受性の株化細胞Aを用いたリン酸化蛋白質の網羅的解析から、アファチニブは主にシグナル伝達経路Xのリン酸化を抑制することが示された。さらに、株化細胞A移植マウスを用いてアファチニブのin vivoにおける効果を解析したところ、アファチニブは著しい抗腫瘍効果を示した。一方、オシメルチニブは抗腫瘍効果を示さなかった。以上から、特定の犬のHNSCCでは細胞増殖にシグナル伝達経路Xが重要な役割を果たしており、そのようなHNSCCではアファチニブを用いたシグナル伝達経路Xの抑制が新たな治療アプローチとなる可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当該年度では、犬のHNSCCにおけるアファチニブの新たな抑制経路の存在およびin vivoでの抗腫瘍効果を発見することができた。
犬のHNSCCにおけるアファチニブの新規治療標的分子を同定するとともに、臨床症例におけるアファチニブの効果を評価する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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