研究課題
犬の頭頸部扁平上皮癌 (HNSCC) は従来の治療法では制御が困難であり、新たな治療戦略の確立が必要である。これまでの申請者の研究で、 アファチニブは特定の犬のHNSCC株化細胞の増殖をin vitroおよびin vivoで強く増殖を抑制することが明らかになった。しかしアファチニブは従来の既知標的分子を抑制しなかったことから、特定の犬HNSCC細胞では新規の標的分子を抑制する可能性が考えられた。そこで当該年度では、まず犬のHNSCC細胞におけるアファチニブの新規標的分子を特定する為、前年度で実施したリン酸化蛋白質の網羅的解析の結果を基にリン酸化が抑制された分子24種類を候補分子とした。次いで、これらの分子の塩基配列を解析すると共にsiRNAを作製した。 塩基配列解析では、いずれの遺伝子においてもドライバーとなる遺伝子変異は認められなかった。一方、分子XをsiRNAによりノックダウンするとアファチニブ感受性細胞の生存率が明らかに減少した。このことから、犬のHNSCC細胞において分子Xはアファチニブの新規標的分子として期待できると考えた。さらに、犬のHNSCC症例を対象としたアファチニブの臨床試験では、アファチニブは特定の犬HNSCCに対して著しい抗腫瘍効果を示した。これらのことから、特定の犬HNSCC細胞では分子Xが生存および増殖に重要な役割を果たしており、アファチニブはこの分子を抑制することで増殖を抑制している可能性がある。本研究ではその分子機構までの解析には至らなかったが、臨床試験の結果を含めて考えると犬HNSCCに対するアファチニブを用いた治療法は新規治療戦略となる可能性が考えられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research in Veterinary Science
巻: 135 ページ: 412-415
10.1016/j.rvsc.2020.10.025. Epub 2020 Oct 31.
BMC Veterinary Research
巻: 17 ページ: -
10.1186/s12917-021-02864-3.