研究課題/領域番号 |
19J15620
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
本間 美紀 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | サライ・アルバム / ティムール朝 |
研究実績の概要 |
ティムール朝ヘラート派絵画の形成には、周辺のタブリーズ派やシラーズ派との交流だけでなく、明時代の中国との関わりも指摘されてきた。ペルシア絵画と中国絵画との関わりは、これまでも度々論じられているが、報告者は、単に画題における影響関係ではなく、ペルシア画家が中国絵画を模写する際の特徴について考察を進めている。2019年度は『サライ・アルバム』に貼られた中国絵画のうち、主に花鳥画に注目し、これまで中国絵画とされてきたものが、構図の分析によってペルシア画家が描いた模写という可能性を検討した。さらに、描かれた鳥の図像的な類似性やティムール朝ヘラート派と明との関係性から、これをヘラート派画家による中国絵画の模写と想定し、その成果を2019年7月のAsian Studies Conference Japanで口頭発表した。また、Asia-Pacific Studies Training Programの一環で8月よりハーバード・イェンチン研究所にて在外研究を行った。上述の研究内容をプログラムのワークショップ内で発表し、他の研修生との意見交換を通じて、改善点や今後の方針を考えた。それらのコメントを踏まえて、再度熟覧調査を行い、論文投稿を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは『サライ・アルバム』における中国画題を、ティムール朝と明の関わりから考察しており、2019年度に注目していた花鳥画も両者の交流の中に位置付けて検討した。ペルシア画家の模写と結論づけるには、技法的な問題や、余白が切り詰められて貼られている状況を説明する必要があり、それらの解明は今後の課題である。在外研究を通じ、これまでティムール朝と明の関わりのみで議論してきたことが、特に模写の特徴に言及する際は、日本における中国絵画の模写を比較に含めた方が、より理解されやすいことを実感した。米国在外研究中という立地を生かし、ボストン美術館、ハーバード大学美術館他で熟覧調査・資料収集などを行った。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の発表でのコメントを踏まえ、まずは花鳥画を題材に、ペルシア画家における中国絵画の模写について日中関係を踏まえてまとめ、投稿する予定である。さらに引き続き2020年度も『サライ・アルバム』に焦点を当て、仏教・道教主題の絵画や版画を取り上げる。仏教・道教主題に関わる画題(観音図、寒山拾得図、羅漢図、四睡図、蝦蟇鉄拐図、四仙図)は、いくつも研究成果が出されているが、報告者は2019年度に検討した花鳥画と同じ要領で、単に画題における影響関係ではなく、ペルシア画家の模写の特徴を考察していく。版画については、同アルバムに貼られた「二十四孝図」と中国版画の構図を模倣したと考えられる数点の絵画を取り上げ、アジア地域で流布していた版本と図様を比較する。2020年度も引き続き米国での在外研究を行う予定であり、引き続き北米の美術館や博物館の調査を考えているが、コロナ・ウイルスの影響で予定していた調査やビザの延長に支障が出ているため、今年度の調査は延期や中止の可能性もあり得る。
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