研究課題/領域番号 |
19J20032
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
桜木 真理子 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 感染症 / 市民科学 / オープンサイエンス / DIY / 科学技術 / 文化人類学 |
研究実績の概要 |
【研究計画の修正】2020年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって当初計画していた海外調査が不可能となり、研究計画の見直しを迫られた。しかし、現在も世界に甚大な被害をもたらしているCOVID-19の蔓延という現象に直面し、迅速な対応を迫られる急性感染症への対応にも目を配る必要があると判断するに至った。特にその中でも市民科学的な対応は、国家機関が主導する感染症対策を補う活動として重要であると考え、以下の調査を実施した。
【文献調査・フィールド調査】①市民科学運動に関する人文・社会科学系の研究を渉猟・整理し、現在の市民科学運動の素地となる歴史的・思想的展開を把握した。②日本の関東圏の市民科学団体を対象としたインタビュー調査を実施し、分散的な科学的実践を支えるテクノロジーのDIYやツール等の共有・循環について明らかにした。③京都工芸繊維大学の津田和俊氏と共に、COVID-19の蔓延に伴う個人防護具(PPE)の供給不足に対する草の根的なPPEのデザイン開発と配布、デザインの収斂に関してオンライン調査を行った。④2020年前半期のアメリカ合衆国における急速な抗体検査の開発・増産とその実施が、科学者や政治家、企業、そして市民の懸念とどのような懸念と結びつくものであったかをオンラインで収集した資料から分析した。
【論文執筆・学会発表等】フェイスブックグループ「COVID-19 と文化人類学」主催のウェブ連続セミナーで口頭発表を行っい(2020年6月)、本発表をもとに執筆した論文は『新型コロナウイルス感染症と人類学』(水声社、2021年4月)に所収された。また、国際学術雑誌『Strategic Design Research Journal』に査読付き共著論文、『ELSIノート』(大阪大学ELSIセンター、2020年10月)に調査レポートが掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の変更は生じたものの、不測の事態に柔軟に対応して調査を進めることができた。短期間のうちに新たな枠組みを構築し、オンライン調査と対面調査を併用しながら調査を行い、すでに複数の中間的成果を発表している。本年度に関わった日本国内の市民科学団体とも円滑な協力体制を築けていることから、次年度も研究の発展が期待できる。以上の状況を鑑み、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は日本とインドネシアの民間人が共同開発しているオープンソースの感染症診断キットに焦点を当てる。そこで、診断キットの開発者およびその協力者に対し複数回のインタビューを実施し、この診断キット開発が象徴するニーズを明らかにした上で、感染症対策を目指すグローバルな科学的実践を成り立たせる技術的・社会的ネットワークの理解を目指す。2021年度の後半はこれまでの研究成果を論文にまとめ、文化人類学の国内雑誌に投稿する。
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