研究課題
細胞外小胞extracellular vesicles(EVs)の中で最も大型であるgiant plasma membrane vesicles(GPMVs)については、膜表面の脂質やタンパク質の集合・離散に関する解析は進んでいるものの、構造や生理機能を詳細に解析した研究事例は少ない。仮に、GPMVsの大きな体積を活用して、多量の生体高分子や細胞小器官を内部に含有させることができれば、質・量ともに多くの物質を輸送できる新しい薬物送達システム(DDS)の構築も夢ではない。私は、GPMVsの応用ポテンシャルの高さに魅力を感じ、GPMVsに関する研究を行なっている。私は、これまでにScott によって報告されたparaformaldehydeを用いたGPMVsの誘導方法を改変し、約200倍の誘導効率を誇る調製法を確立した(Okada et al. 2020)。また、調整したGPMVsについて、網羅的な解析を行い、構造を推定することで基礎的な知見を蓄積した(Okada et al. 2018)。さらに、精製した大型膜ベシクルを培養細胞へ効率よく取り込ませる条件を検討した結果、受容細胞を糖鎖分解酵素(α2-3,6,8 neuraminidase、PNGase F)で事前に処理し、シアル酸を含む糖鎖状態を変えることで、相互作用を高められることを見出した(Okada et al. 2021)。これらの成果を元に、GPMVsのDDSへの応用を検討した結果、抗がん剤doxorubicinを内部に濃縮した大型膜ベシクルと糖鎖処理を施した細胞を共培養した結果、細胞死が誘導されたことから、大型膜ベシクルを介して細胞に薬剤を送達し、効率よく作用させられることが示唆された(論文投稿中)。本研究の研究成果は、大型膜ベシクルを基礎バイオロジーおよび保健医療の研究分野で活用できる可能性を期待させる。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Biochemistry
巻: Volume 171, Issue 3 ページ: 339-347
10.1093/jb/mvab144