研究課題/領域番号 |
19J20060
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
後藤 佑一 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 時系列解析 / 方向統計学 / 二値系列 / 頑健性 / 判別解析 / スペクトル / Kolmogorov--Smirnov検定 |
研究実績の概要 |
本年度は、当初予定していた二値系列に関する論文2本を発表した。さらに、ベルギーのブリュッセル自由大学で2か月間研究滞在をし、Marc Hallin教授と共同研究を行った。これらの内容に関して、5つの国際学会と2つの国内学会で合計7回の口頭発表を行った。 1つ目の論文は、Goto & Taniguchi (2019, Journal of Time Series Analysis)のアイデアを用いて、二値系列に基づくスペクトル密度関数の推定量に基づく判別解析理論を構築した。観測数に増大に伴い、提案手法の誤判別確率が0へ収束することを示した。さらに、カテゴリが近接する場合に、非自明な誤判別確率を評価した。また、提案判別手法が外れ値に対して頑健であることも証明した。この内容は、Goto and Taniguchi (2020, Metrika)として採録されている。 2つ目の論文は、既存のモデルを包括するMA(p)スペクトル型円周上の確率密度関数を提案し、基本的な性質を示した。提案モデルの未知パラメータ推定手法として、二値系列を円周上のi.i.d.系列に対して初めて導入し、二値系列に基づく推定量を構築した。さらに、提案推定量の漸近正規性と確率密度関数がノイズで汚染されている場合に頑健であることを明らかにした。この内容は、Scientiae Mathematicae Japonicaeに単著論文として受理されている。 Marc Hallin教授との共同研究では、バイナリ時系列に基づいたラプラススペクトル密度関数に対してKolmogorov--Smirnov検定の構築を行った。提案推定量のSkorokhod空間上での弱収束を示し、臨界値を求める手法を提案した。その方法に基づいて構築された検定が一致性を持つことを明らかにした。この内容は、今後、国際誌へ投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
評価の理由として、本研究の根幹である実数上の時系列に対する二値時系列に基づくパラメータ推定理論及び判別解析理論の構築に成功しており、これらの論文が、国際誌に掲載されている(Goto & Taniguchi, 2019 Journal of Time Series Analysis, 2020 Metrika)ことが挙げられる。これは、年次計画の「申請時点から採用までの準備」が遂行できたことを意味する。さらに、円周上系列に対して二値系列を導入し、二値系列に基づく推定量の漸近的性質や頑健性を明かにしたこと及びこの内容が単身著書として国際誌に受理されていることは、年次計画の1年目の目標をi.i.d.系列に対して達成したことになる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、年次計画の2年目の目標である「円周上時系列に対して二値時系列に基づく判別解析理論を展開し、ある種の最適性を記述すること」を目標に研究を推進する。上記で述べたように、初年度に実数上の二値時系列に基づくパラメータ推定及び判別解析理論の構築、円周上に二値系列を導入した。円周時系列の場合も、大まかな研究の流れは実数上時系列の場合と同様に進めることが出来ると予想される。そのため、より具体的な目標として、(1)観測数の増大に伴い誤判別確率が0へ収束すること、(2)カテゴリが近接した場合に非自明なご判別確率を評価すること、(3)二値時系列に基づいた判別手法の頑健性を記述することと定める。 円周上の時系列に対するスペクトルの議論については、先行研究がほとんどないが、ノンパラメトリックなアプローチを取ることで解決できると予想している。この計画を達成するために、アメリカのメリーランド大学に研究滞在しBenjamin Kedem教授と共同研究を予定している。また、理論的結果だけではなくコンピュータを用いた数値シミュレーションでの有限サンプル性能評価及び実データ解析も行う予定である。上記の結果が得られ次第、国際誌へ投稿及び学会発表で研究成果を国内外へ発信する予定である。
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