研究課題
X線自由電子レーザー(X-ray free-electron laser)は,高いピーク輝度と空間コヒーレンスを有する極短パルスレーザーである.しかしながら1パルス毎のばらつきが大きいため,従来のX線光学素子では,高い安定性の下サイズ10nm以下に集光することが困難であった.そこで申請者はWolter配置に基づき凸面,凹面を有する2枚のミラーを組み合わせることで,コマ収差補正性能と高い縮小倍率を有した集光光学系を考案した.昨年度までに回折限界条件を満たすミラーの作製に成功している.本年度は日本のXFELであるSACLAにて,ばらつきの無いsub-10nm集光をX線干渉計,およびX線回折イメージング法ベースで実測した.また申請者は,極限的な集光サイズ5nm以下の達成を目指した.このとき,ミラー形状には0.5nm PVの精度が求められ,現存の加工手法では達成が不可能であった.そこで,形状可変型多層膜ミラーを光学系に導入した.有限要素シミュレーションに基づき,加工法で残存すると考えられる形状誤差を十分に除去できることを確認した.そして,日本のSPring-8にて実証実験を行った結果,X線集光波面ベースでサイズ5nm集光が達成されていることを確認した.最後に,アメリカのAPSのアップグレード計画の共同研究者としてビームラインの立ち上げに関わることになり,ハイブリッド型形状可変ミラーを開発した.有限要素シミュレーションと材料力学に基づき,ハイブリッド型形状可変ミラーの最適な変形手法を考案した.SPring-8にて実証実験を行った結果,変形に必要な印加電圧量を半分に抑えることに成功した.これは光学系の高安定化だけでなく,沿面放電などによる実験セットアップの制限の緩和につながると期待される.本成果の重要性から,APSメンバーとの国際共著で論文を執筆し,すでに出版された.
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 9件)
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