研究課題/領域番号 |
19J20096
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
能登 大輔 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 熱対流 / 回転場 / 相変化 / 光学的可視化 / 画像処理 / ニューラルネットワーク / 実験流体 |
研究実績の概要 |
昨年度購入した産業用カラーカメラを用い,様々な複雑性を有する自然対流流れ場における光学的可視化計測およびデジタル画像処理技術の開発を行った. 回転熱対流現象のスピンアップ過程における過渡的な遷移現象の調査によって,従来その多くが平衡状態においてのみ議論されてきた熱対流現象における,複合的な時空間スケール現象の一部を定量的化することに成功した.熱流体工学や地球惑星科学において重要な,回転場における熱対流の多様な時空間発展として,重大な発見となった. 液化天然ガスタンクを模擬した不混和二層対流場における計測では,計測的な困難さからこれまで調査されてこなかった三次元的な対流の結合構造を,カラー画像処理技術を応用した二断面三成分速度場計測法の開発によって定量的に調査した.対流の初期段階において支配的な熱的な結合構造が,微弱な回転場の効果でも弱められることが明らかとなった. 通常の熱対流と異なり,傾圧のみによって駆動される水平対流現象を対象として,熱拡散時間に迫る長時間画像計測によって傾圧と復元力の効果を解明した.浮力駆動の熱対流の延長として研究されてきた水平対流から,傾圧の効果のみを明示的に抽出する実験を行い,従来研究で埋没していた基本場の抵抗力(復元力)が対流の時空間発展に大きな影響を与えることが明らかとなった. 色情報を用いた流体計測の一貫として,ニュートン流体における光弾性計測法の可能性を探った.微少な板状粒子を水に懸濁した流体に対し偏光板を用いた観察を行うと,流体変形が色情報として現れる光弾性の効果が表れることを解き明かした.直接的に流体変形およびそれに伴う内部応力場計測を,カラー画像計測として実現する可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの二年間で推進してきた,デジタル画像処理による汎用的な流体計測原理の開発が,実用的に多様な流れ場計測に適用可能な段階に到達してきた.自然対流のような非定常な時空間発展をする流れ場は,それぞれが有する複雑性から独自の計測課題を有し,適宜解決することが求められている. 本研究でのこれまでの計測対象は,伝統的に研究されてきた回転熱対流や水平対流現象,相変化を伴う混相流れ場となる二重拡散対流現象,実機において実現可能な計測が求められる多層対流現象など,多岐にわたる.いずれの計測対象も,単なる計測法開発の対象としての流れ場ではなく,それぞれにこれまで未解明だった重要な物理現象を抽出することに成功している.それぞれに最適な計測法を開発する本研究が,熱流体力学の基礎物理研究としての側面はもちろん,地球惑星科学,エネルギー工学など,領域横断的な波及効果を生み始めている.本研究の最終目標である,あらゆる複雑流れ場に適用可能な,ロバストな計測原理の開発が実現されつつある.
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今後の研究の推進方策 |
より高度な熱対流計測の実現のため,カメラ二台および光源を並進運動させて多断面の計測を行う,スキャニング計測システムを開発する.これにより,三成分速度場計測および温度場計測を三次元的に行うことを可能にする.この手法を回転熱対流現象に適用することで,従来あまり注目されてこなかった,局所対流構造の担う熱輸送の効果を体系的に調査する. これらに加えて,カラー画像処理技術を応用した,単視点(カメラ一台)での三次元三成分速度場計測技術を開発する.この技術が,感温液晶粒子を用いた温度場計測と共存する可能性を詳細に検証し,最終的にはカメラ一台,光源一台での三次元三成分速度場・温度場同時計測を目指す. 複雑な自然対流現象として,新たに気泡対流と非ニュートン流体対流を設定する.気泡対流は気液二相流(混相流)問題となり,これまで計測してきた単層の流れ場計測よりもさらに計測難易度が上がる.また,非ニュートン流体は局所的な流れ構造の変化に応じて流体物性が変化するため,ニュートン流体と比較すると格段に計測難易度が上がる. 独自に開発した計測法及び明らかになる未解明な物理現象をそれぞれ国際誌に発表する.
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