研究課題/領域番号 |
19J20117
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
細田 至温 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 確率モデル / ベイズ推定 / 機械学習 / ヒト腸内細菌叢 / メタゲノム / 統計モデル |
研究実績の概要 |
2020年度においては、「時系列腸内細菌叢データを用いた確率モデルに基づく時間変化する細菌相互作用の推定手法の開発」に取り組んだ。時系列細菌叢データから細菌相互作用を推定する手法の一つとして,ロトカ・ヴォルテラ方程式に基づくものがある.この方程式は,ある細菌の増加率は他の細菌の存在量に依存するという仮定に基づく微分方程式で,その合理的かつ基本的な仮定から広く用いられている.一方で,細菌の代謝ネットワークはその環境に応じて変化することが知られている.すなわち,細菌相互作用は栄養などの条件の変化が激しい環境,たとえば,ヒト腸内では時間変化することが考えられる.しかしながら,これまで提案されてきたこの方程式に基づく手法では細菌相互作用の時間変化は考慮されていなかった.本研究では隠れマルコフモデルを組み込むことで時間変化する細菌相互作用の推定手法を提案した.隠れマルコフモデルは各時点において隠れ状態と呼ばれる変数が一時点前の隠れ状態にのみ依存し変化していくことを仮定したモデルである.本研究では,各時点での細菌相互作用は数種類に分けられ,環境の変化が起こった時に状態が変わると仮定した.人工データの実験では,細菌相互作用の時間変化を考慮していない先行研究の手法より正確にパラメタが推定できることが示唆された.実データ実験では,マウスの腸内細菌叢データを用いた.提案手法はマウスの食事の繊維量を変化させた時に細菌相互作用が変化していることを推定し,提案手法により環境の変化を捉えられることが示唆された.本研究により,様々な要因が複雑に絡み合うヒト腸内細菌叢の解析において有用な手法が提案できたと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
論文執筆まで完了し,査読付き論文誌への掲載が決まったため.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で提案した手法をさらに改善する.また,共同研究などにより推定結果のさらなる解釈を行う.
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