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2020 年度 実績報告書

高温超伝導体原子層デバイスの創製とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 19J20150
研究機関大阪大学

研究代表者

鈴木 将太  大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2022-03-31
キーワードスピントロニクス / スピン流 / ナノデバイス / カイラル磁性体
研究実績の概要

電子は、電荷とスピンという二つの性質を持ち、スピンは磁気的な性質を担う。近年、このスピンの性質を積極的に利用するスピントロニクスという分野が急速に発展している。スピントロニクス研究の根幹を担うのが、スピンの流れであるスピン流である。スピン流は電流と違い熱を発生させることなく情報を伝達できるため、次世代の低消費電力デバイスへの応用が期待されている。最近、スピン流が、物質中の磁気的な揺らぎによって変調を受けることが報告されており、磁性体の磁気状態を調べる手段として注目されている。
私は、前年度までで、スピン輸送測定に必要なナノデバイスの作製手法を確立し、超伝導体や反強磁性体を用いて測定を行ってきた。反強磁性体ではその磁気状態に起因するスピン信号の変調を観測することができた。本年度は、カイラル磁性体CrNb3S6という物質に着目し、研究を行った。カイラル磁性体とは、らせん状の結晶構造をとり、ある温度以下でらせん型のスピン配列をとる物質のことである。大容量磁気記憶デバイスなどへの応用が期待されており、様々な研究がなされているが、その磁気構造については不明な点も多い。とくに、結晶の端の状態は理論計算で重要となるが、分かっていない。本研究では、カイラル磁性体CrNb3S6を用いてスピン輸送測定を行うことでその磁気構造について調べることを目的とした。
CrNb3S6を用いたナノデバイスを作製し、スピン輸送測定を行った。すると、らせんの端が固定端であることを示唆する結果を得た。さらに、結晶中に含まれるらせんの長さにより、その磁気状態に違いが生じることが示唆された。このように、スピン輸送測定により、従来の手法では得られなかった新たな知見が得られている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度に引き続き、超伝導体や反強磁性体を用いたナノデバイスの作製条件を探索し、アルゴン雰囲気中で高品質なデバイスを作製する工程を確立した。しかし、実際の測定においては期待していた結果は得られておらず、さらなる測定条件の最適化が必要である。
一方、カイラル磁性体CrNbSを用いたスピン輸送測定では、デバイス作製条件を最適化し、その特異な磁気状態に起因する信号を得られた。これは、当初の予定にはなかった実験だが、予想以上の成果を得られている。
以上の理由を総合して、「おおむね順調に進展している」と判断した。

今後の研究の推進方策

まず、前年度できなかった高温超伝導体を用いたスピン輸送測定を行う。高品質なデバイスを作製できるようになっているので、測定条件にあったデバイス構造を探索する。
さらに、反強磁性体においてスピンゆらぎの及ぼす影響を調べるため、三角格子反強磁性体Mn3Ni1-xCuxNにおけるスピン輸送測定を行う。磁気秩序状態がスピン流電流変換信号に影響を及ぼしていることは確認したため、詳細な温度依存性を測定し、スピン拡散長やスピン緩和時間を定量的に評価する。
そして、カイラル磁性体CrNb3S6の磁気状態をスピン輸送測定により評価する。前年度で、その特異な磁気状態に起因する信号の変調を確認したため、その理論的な解釈を試みる。スピン流-電圧変換信号の温度依存性を詳細に調べ、異常ホール効果との関係を調べる。さらに、反強磁性体と同様に、スピン拡散長やスピン緩和時間を評価し、定量的な議論を行う。
以上の結果をまとめ、スピン流と物質中の磁気状態の関係について、総合的に評価する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] カイラル磁性体CrNb3S6におけるスピン輸送測定2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木将太, 佐々木壱晟, 太田智陽, 川原遼馬, 谷口祐紀, 荒川智紀, 乾皓人, 島本雄介, 高阪勇輔, 戸川欣彦, 小林研介, 新見康洋
    • 学会等名
      日本物理学会 第76回年次大会

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公開日: 2021-12-27  

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